第27章 【脹相】へる日々
「伊地知さん、ごめん急に。ちょっとこれ、なる早で揃えたくて。全部じゃなくても揃うのだけでいいから!」
そう言うと虎杖は品物が書かれたメモを伊地知に渡した。
伊地知はメモを受け取ると目を走らせる。
「湯たんぽ、カイロ、温かい飲み物、ブランケット、鉄分が取れるもの……何だか冷え性の女性が欲しがりそうなものばかりですね」
メモを読み上げ、率直な感想を言った伊地知に虎杖は目を見開くと「そうそう!実はかくかくしかじかで…」と事情を説明した。
「そういうことでしたか。では、取り急ぎ手に入る物を集めてみますね。…ちなみにこのメモは虎杖くんの字ですか?」
「いや、それは脹相が書いたやつ。こいつ、初めて字書いたんだってさ」
「あぁ、脹相さんでしたか。とても字がお上手なので気になりまして…」
「なんかこういうところは器用みたいよ、こいつ」
「悠仁、さっきからこういうところ“は”とは…」
先程と同じ不満を口にしようとする脹相を尻目に、「んじゃ、伊地知さんよろしく!」と片手を上げて去ろうとする虎杖。
そんな虎杖を伊地知は呼び止めた。
「あ、虎杖くん。一つ、私から提案なのですが…」
「ん?」
「この品物は私が準備するので、虎杖くん達は刹那さんへ何かすぐ食べられる温かいものを作ってみてはいかがですか?いつも刹那さんに食事を用意していただいているので、たまには他人の作ったものを食べるというのも嬉しいものだと思いますよ」
そう優しく微笑む伊地知に二人とも目から鱗が落ちているようだった。
「伊地知さん、ナイスアイディア!」
虎杖が親指を立てるとさらに「今の時間でしたら厨房も空いていると思いますよ」と有益な情報をくれる。
「わかった!伊地知さん、ありがとう!ほら、脹相行くぞ」
脹相は虎杖に背中を押されながら今度は厨房へと向かっていった。