第27章 【脹相】へる日々
虎杖が八重の部屋から帰ってくるのを談話室で待っていると、しばらくしてから焦った様子で虎杖が戻ってきた。
「いやー、脹相行せなくてよかったー」
「どういう意味だ?」
初めから行くつもりがなかった脹相もそんなことを言われれば理由を聞きたくもなる。
「いや、八重さんの体調不良とか脹相にはわかんないかもしれんから…」
「?…何が原因か悠仁はわかるのか?」
「いや、そりゃね…ほら…女の子の…アレ…」
その一言で談話室にいた他の高専メンバーは「あぁ、アレね…」と察しているのに対して脹相の顔は険しくなっていく。
「アレとは何だ?」
「え、いやー…脹相になんて説明すればいいのか、なー…」
かなり気まずそうな虎杖の様子に、脹相はそんなにも由々しき事態なのかとその回答を待ちきれずジリジリと虎杖との距離を詰める。
その圧に耐えかねた虎杖は「あー、もう!」と声を上げると脹相の腕を引いた。
「俺、説明できんから!ちょっと来て!」
そう言うとグイグイ腕を引っ張って歩き始めた。
理由はどうあれ虎杖と腕を組んで歩いている状況に脹相は何だか嬉しそうで、特に振り払うことなくそのまま歩き続けた。
連れて行かれたのは八重愛用の図書室で、中に入ると「うーん、どこだ?」と唸りながら虎杖は本棚を見て回り、一冊の本を持って戻ってきた。
表紙には『猿でもわかる保健体育』の文字と明るい表情の猿が書かれていた。
「悠仁、さすがに猿は俺でも傷つくぞ?」
「それくらい簡単って比喩だよ!」
虎杖はページをパラパラ捲り、「あ、あったあった」と言って本を渡した。
脹相は黙って開かれたページに目を走らせた。
「…月経…悠仁が言う“アレ”とは生理のことか?」
「え?知ってんの?」
「ここまで詳しくは知らんが器の記憶でだいたいどんなものかは知っている」
「は?じゃあ、さっきのでわかれよ」
「悠仁は“アレ”としか言わなかったのでわからなかった」
「なんだよー!そしたらわざわざ図書室まで来なかったのにー!」
「どうして生理だと八重のところに行ってはいけないんだ?」
「いや、男に生理のこと突っ込んで聞いてほしい女子なんていないだろ」
「そうなのか?」
「え、器の記憶ってデリカシーまでは引き継がれないの?」
「ないな」
虎杖はガックリと肩を落とした。