第27章 【脹相】へる日々
「悠仁くんも五条さんももう朝食を食べ終わりましたし、まだ食堂で召し上がっている人がいるので片付けはもう少ししてからになります」
八重はそう言うと微笑みながら盆を差し出してきた。
「脹相もどうぞ。適当に見繕ってしまったので、お好きなものがあるといいのですが…。今日は新しいものも作ってみたので是非食べて…あの…感想、などいただければ…」
最後の方は消え入るようになったのは、今まで脹相が食事の感想など述べたことがなく、それなのに感想を催促してしまうようで気が引けたのかもしれない。
今まで感想など言わなくても脹相が食べているだけで八重は嬉しそうにしているので脹相もそれでいいと思っていた。
しかし、それだけではなく、感想は言ってやるべきなのだ。
皿を見れば、先程食堂で見かけた八重の新作おかずも盛られている。
それを箸で摘んでみる。
「…これは何だ?」
「これは“あすぱらがす”という野菜を“べーこん”という燻した塩漬け肉の薄切りで巻いた料理です」
「こっちは?」
「これは“すぱにっしゅおむれつ”という卵料理で、刻んだ野菜や“べーこん”を炒めて卵と一緒に焼いたものです」
「八重にしては珍しいな」
「はい。若い方は和食よりも西洋の料理の方が口に合うようなので少しずつ作れるものを増やしてみようと思いまして」
「…そうか」
どこまで行っても他人のため。
それでも、その穏やかで満足げな顔を見ればそれでいいのかもしれない、とも思う。