第26章 【五条】永遠のコ
体調を崩したって聞いて八重の様子を見に行った八重の部屋。
もちろん八重はいない。
八重がドア一枚隔てた所で八重が苦しんでるのに何も出来なかった。
そんなに苦しまなくてもいいって言いたかったのに、伝わらなかった。
それがわかった時、腹が立ったのは八重にじゃなくて救ってやれない僕自身に対してだったのかもしれない。
カン。
ついこの前、八重が誕生日を祝ってくれた屋上。
八重は…いない。
八重からのサプライズ、かなりビビった。
けれど、ケーキは美味いし、八重は何でもお願い聞いてくれたし、それに…八重から僕に触ってくれた。
嬉しかった。
本当に人生で一番の誕生日だと思った。
また来年も…なんて欲が出る。
コン。
八重の一日のスケジュールは把握しているつもりだった。
けど、思い当たる所のどこにも八重はいない。
僕は八重のこと知った気になって、実際はたぶんほとんど何にも知らない。
なのに、僕の内の玉は止まることを知らない。
八重とのいろいろなギミックを通過して、緻密に設計されたような道を転がる。
最後どこに辿り着くのか、辿り着くまで分かりもしない。
目の前を見知った補助監督が通り過ぎた。
「新田ちゃーん、八重知らない?」
努めていつも通りの軽さを心掛けて声をかける。
「あ、八重さんだったら赤血操術組のところに差し入れ持ってったッスよ!」
どうりで何処にもいないワケだ。
新田ちゃんにお礼を行って、ゆっくり向かう振りをする。
新田ちゃんが見えなくなると自然とスピードが上がる。
大丈夫だろ。
赤血操術組ってことは悠仁がいる。
脹相だっている。
僕の次くらい安心できるだろ。
大丈夫。
きっと何も知らない八重は笑ってるさ。
赤血操術組の鍛錬場に着いた。
すぐにドアを開けた。
ほら、八重は笑ってる。
誕生日だけ僕に見せてくれたような優しくてあどけなくて可愛い笑顔。
それを当たり前のように脹相に向けている。
カタン。
パタン。
そうして玉は止まって、代わりに白い旗が立った。
…おいおい、ピタゴラスイッチかよ。
でも、ようやく分かった。
僕は八重が…