第26章 【五条】永遠のコ
八重が眠っているとわかってから、そっと八重の頬に触れてみた。
そしたら死体かと思うほど冷えていた。
寒いんじゃん!
と心の中でツッコミながら急いで八重を抱えて部屋に戻って毛布でグルグル巻きにしてストーブの前に鎮座させた。
その間も八重は起きることはなくて、目を覚ましたのは夜が明ける頃だった。
目覚めた八重はすこぶる通常運転で、
「…私、眠っていましたか?いつの間に眠っていたのでしょう?」
と頭の上にたくさんハテナを浮かべながら日常の仕事に戻っていった。
それからは本当に昨夜が夢だったんじゃないかってくらいいつも通り。
名前は「五条さん」に戻っていたし、冗談を言えば微笑むけどあどけなく笑ったりなどしない。
ただ、いつも通りくっつきに行った後、
「頭、撫でたっていいんだよ?」
と言えば、少しだけ、ほんの少しだけ嬉しそうに微笑んで数回頭を撫でてくれるようになった。
そんな誕生日の興奮(?)冷めやらん状態を数日過ごした頃だった。
「今更、んなことお前が気にしたってしょうがねーじゃねーか」
たまたま通りかかった談話室から日下部さんの呆れたような声が聞こえた。
何の気なしに覗いてみると、呪術界きっての良い子オブ良い子、京都校2年の三輪ちゃんが部屋の隅っこで壁の方を向いて体操座りをしてズブズブと漆黒に沈んでた。
いつも元気で明るい彼女がそこまで落ち込むなんて珍しいなと思って、日下部さんに
「彼女、どうしたの?」
って軽く聞いてみた。
「あぁ、五条。何でもさ。刹那ちゃんが八百比丘尼だってことを三輪が本人から聞いて、それを楽巌寺学長に話しちまったらしい。そしたら上層部にまで話が行って、『高専管理の特級秘匿物にすべき』なんて話が出てる、とか何とか」
「は?」
なんだそのふわっとした説明は。
どこまで本当なのか判断もできやしない。
けれど、僕の声のトーンとか表情とかを見て、日下部さんは「あ、やべー…」って顔をした。
心臓がバクンと大きく脈打った。
「いや、でも、三輪の話だし。何かの間違いかもしれねーし。まだ正式に下りてきたわけでもねー。ただの噂話ってことでー…」
「ただの噂話にしちゃ内容がえげつないんだよ」
そんなことしたって意味もないのに日下部さんを威嚇するような低い低い声が出ていた。