第26章 【五条】永遠のコ
その後も八重は飽きもせず僕の頭を撫で続けた。
それはどんなヘッドスパよりも極上で。
「…なんだか、少し眠くなってきた」
あくびを何度も噛み殺して、遂には思わず口にしてた。
八重は優しく微笑んだ。
あぁ、少しずついつもの八重に戻りつつあるのかもしれないっていう予感。
でも、僕の髪を梳く手は止まっていない。
「今日は仕事詰めでお疲れでしょう。どうぞ、少しお休みください」
ペッパーくんみたいな丁寧な言葉。
でも、僕に触れる手は温かい。
「君は?」
「悟さんが起きるまでこうしています。もとより今日は星を見る予定ですので」
まだ今日を終わりにしなくていいことにホッとしている自分がいる。
「寒くない?」
「ええ」
「眠くない?」
「ええ」
微睡む頭では簡単な問答しかできない。
「私の手は温かくて気持ちがいいと好評いただいているんですよ?」
そう言うと八重は頭を撫でていない方の手で僕の目を塞ぐように覆った。
ホットアイマスクよりも柔らかくて温かい。
「そうだね。気持ちいい」
これは抗えそうにない。
意識が落ちていくのを自覚する。
その狭間で優しい八重の声が鼓膜を震わす。
「おやすみなさい。悟さん…」
*****
夢は見なかった。
ただ急激に意識が浮上する感覚。
勢いよく瞼が持ち上がる。
もう八重の手は置かれていなかった。
視界に入るのは満天の星空に八重。
どのくらい寝たかはわからないけど、まだ夜は明けてない。
「僕、どのくらい寝てた?」
眠る前と変わらない。
…いや、変わってる。
僕の言葉に八重の返事は聞こえてこない。
見れば八重は目を閉じていた。
「八重?」
名前を呼んでも返事はない。
「おーい、八重ー?」
さっきよりも少しだけ声を張って呼んでみる。
それでもピクリとも反応はない。
ただ、すうすうと安らかな呼吸の音だけしか聞こえない。
え?
これ。
もしかして。
八重…
寝てんじゃん!