第26章 【五条】永遠のコ
「こんなにゆっくり誕生日を祝ってもらうのも初めてかな」
幼い頃は五条家で盛大に、学生時代は友人達と賑やかに。
その後は…祝いもしなかったかな。
なんか皆、僕の誕生日の日に限って忙しいみたいだしー。
でも、今日のはどれとも違う。
すごく…そうだな…リラックスしてる。
「そうですか?結局お誕生日が終わる直前になってしまいましたが…」
「それでも、だよ。時間じゃない。気持ちだよ、気持ち」
八重は不思議そうに僕を見つめていたけど、目が合って僕が微笑むとつられたように笑った。
「そういうものなのですね…。悟さん、あの…私からも一つだけよろしいでしょうか?」
少し言いづらそうにする八重。
「ん?なに?」
八重から何か断りを入れられるのは珍しい。
本人もその自覚があるのかちょっと恥ずかしそうにしてる。
「頭を…触らせていただけないでしょうか?」
「え?」
八重が?
僕に触るの?
僕が聞き返せば、八重はハッとして慌て始めた。
「あ、すみません。男性の頭を触るなど無礼ですよね…でも、いつも頬に当たるあなたの髪が柔らかかったので、前から一度触ってみたかったんです」
そんなこと考えてもみなかった。
僕がすり寄っても、抱き締めても、八重は何とも思ってないと思ってた。
僕が触れているその時に八重も僕に触りたいって思ってたってこと?
じゃあ、その瞬間だけ僕は八重の特別になれてたってこと?
いや、そういうことにしとく!
「…いいよ」
「あ、ありがとうございます!」
八重の手がそっと僕の頭に落とされる。
最初は遠慮がちに表面を撫でていた手は、次第に髪を梳くように指を通していく。
「柔らかくて触り心地がいいです」
僕だって気持ちがいい。
「八重ってさ、僕のこと、大型犬か何かだと思ってるよね?」
「そんなことありません。こんなに大きな犬がいたら怖くてたまりません。悟さんは怖くないですから」
すごい信頼。
「そう?僕だってそのうちオオカミさんになっちゃうかもよ?」
って、八重に言ったって通じないんでしょ?
「あはは。それは怖いですね。満月の夜には気をつけます」
ほら、やっぱり(笑)
てか、そっちは知ってんだ?