第26章 【五条】永遠のコ
「八重、もう一個いい?」
何だか今日なら多少のお願いは言いやすいし、聞いてもらえるんじゃないかって思った。
「はい、どうぞ」
「今夜だけでいいから名前で呼んでくれない?」
「?はい」
八重は不思議そうに返事をしたけど、うーんと少し考えてから
「えーっと、五条悟さん?」
やっぱり不思議そうにそう呼んだ。
あ、そういうこと?
「わぉ、フルネーム。違う違う、下の名前、下の名前」
「あぁ、そっちですか。えっと…悟、さん」
一瞬。
ほんの一瞬だけ息が止まったような気がした。
「もう一回」
「…悟さん」
なんて言えばいいのかなー。
「悟さん?」
控えめに言って。
「…誕生日、最高」
僕がそう呟けば、八重は嬉しそうに笑った。
「喜んでいただけて、よかったです」
「いや本当に、冗談なく、今日が人生最高の誕生日だよ」
本当に、冗談じゃない。
八重に届いてほしい。
「ケーキは美味しかったし」
「来年も焼きますよ…あ、ちなみにあのケーキ、少しだけ脹相に手伝ってもらいました」
「うわー、今聞きたくなかったなー、それ」
「すみません。でも、全部私の手柄という訳にはいきませんので…」
「ちなみにどこが脹相作?」
「生地に混ぜる卵白を泡立てていただきました。私の力ではなかなかよく泡立たず…」
「調理場に電動ミキサーあるじゃん」
「!あるんですか!?」
あ、電動ミキサーは知ってるんだ?
八重の知識の偏りはまだちょっとわからない。
「たぶんあるよ。今度探してあげる」
「え、電動のものがあるなら別立てじゃなくて、共立ての生地も…」
作り方はよくわからないけど、ブツブツそんなことを呟く八重はお菓子作りに結構ハマっているのかもしれない。
「来年は100%八重作でよろしく」
「はい!」
今後もおやつには困らなそうだ。