第26章 【五条】永遠のコ
そりゃ、1週間以上前からほとんど冗談みたいに誕生日アピールはしてたよ?(特に悠仁は今年入学で知らないだろうから)
でも、悠仁は「あ、そーなんだー」で済ませてくれちゃうし、2年メンバーは聞こえないふり。
終いには真希が
「そんなん決戦終わった後に恵と合同でやりゃいいだろ」
なんて言うもんだから、皆もう全然眼中にないって感じだった。
今日だって朝、食堂で悠仁だけ「五条先生、誕生日おめでとー!」って言ってくれたけど、やっぱり周りの皆は聞こえないふり。
ひどいもんだ。
八重だって、今日、声かけてきた時なんておめでとうムード全然なかったじゃん。
なのに、これ、このケーキ、1週間以上も前から練習してたヤツじゃん。
「“さぷらいず”成功でしょうか?」
「うん、驚いた。本当、テッテレーって感じ。でも、どうして?」
「?どうして、とは?」
至極不思議そうな顔で聞き返してくる顔もいつもより幼く見える。
「いや、決戦が終わったら恵と一緒にやろうって話だったよね?」
「あぁ、そうでしたよね」
そんなことかと言うような八重。
「私も決戦前に不謹慎かなとも思ったのですが、でも、今日が誕生日なら今日お祝いをしたかったんです。だって、五条さんの29歳の誕生日は今日しかないですから」
そう笑うと八重はマッチを取り出して、2と9のロウソクの頭に火をつけた。
「願い事をしながらロウソクを一息で消すと叶うんですよね?」
揺らめく火を見つめた。
八重は永遠に等しい時間を生きるコ。
その膨大な時間を川の流れのようにただ眺めているだけだっていいはずだ。
けど、八重は違う。
八重はそんな変わり映えのしない川の流れをいつだって何枚も何枚も写真にとって、大切にアルバムに入れて持ち歩いている。
どんなにそれが重くたって捨てたりせずに、たまに見返して苦しくなったって破ったりせずに。
その一瞬一瞬を生きている。
そんな八重に僕ができることと言ったら、後から見返して笑えるような刹那を遺すことくらいだ。
「五条さん、どうぞ」
ロウソクの火に照らされて柔らかく笑う八重。
僕は一息で火を消した。
「何をお願いしたんですか?」
八重が訊くから、
「楽しい思い出を作れるように、かな」
本当にそう願ったんだ。