第26章 【五条】永遠のコ
「あー」
八重は眉を下げて語調を濁す。
「あの、やっぱりいつもと違いますか?」
困ったように、でも少し照れたように笑いながら。
『やっぱり』?
いつもと違う自覚は、ありか。
「そーだね。新幹線のはやぶさとこまちくらい違うかな」
「新幹線…は、機関車より速い乗り物、ですよね…。隼…小町…」
「あ、うん、ごめん。今度図書室で調べて。要するに、似て非なるって言いたかっただけ」
「はぁ…」
あ、気の無い返事はいつもと一緒。
「で、今日は何かあったって?」
「…何かあった、と言いますか、何もない日、なんです」
「ん?」
「今日は私が私でいて良い日なんです…訳、わからないですよね…」
そう言って一滴だけ切なさを垂らしたようなあどけない笑顔する八重。
僕は空を見上げた。
天上には星だけが広がっている。
そうか…今日はそういう日なんだ。
そのことだけを理解する。
「もっと早く言ってくれれば昼間からもっと八重と一緒にいたのになー」
ふざけたように言ったけど、本当これ。
もっと素の八重を見れたはずなのに、意識が夜の屋上に向き過ぎていた。
本当、残念。
「で、今からは一緒に星見る?それとも何か告白でもされるの?僕」
「あ、そうでした!五条さん、今、何時ですか?」
こういうのスルーするところはいつもの八重と変わんないだー。
僕はスマホをボタンを押して時間を確認する。
「今は23時32分だね」
「そうですか。よかったです」
「?」
「ギリギリ間に合いました」
そう言って八重はベンチの下から風呂敷包みを出して、結びを解いた。
(いや、嘘でしょ?)
中から真っ白な箱。
八重はその箱の大きな蓋に手をかけ、開ける。
(ホント、君って)
中には白くて丸いもの。
上に2と9の形をしたロウソクが立てられてる。
(最高かよ…)
「五条さん、誕生日おめでとうございます」