第26章 【五条】永遠のコ
って、昨日言ったよ?
言ったけどさ。
これ、何?
「昨日はご心配いただき、ありがとうございました。とても、嬉しかったです」
そんな模範解答とよそ行きの笑顔。
その下に見え隠れする盛大な諦めと静かな決意。
「僕さ、『申し訳ない』って言うなって言ったけどさー」
あ、僕、今、怒ってるかも。
「そんな『もういいんです』みたいな顔させるために言ったわけじゃないんだよ。何考えてんだか知んないけど、マジでこっちは笑えないからな」
そう言われて驚いたのか呆然とする八重を置き去りにして悠仁のところへ戻った。
「先生、どったん?」
顔に不愉快さが出ていたのか悠仁が気付いて声をかけてきたから、
「べっつにー」
と、おちゃらけて悠仁の皿に乗ってたウインナーを取り上げて食べた。
「あー、ちょっと先生!食べんなら自分で取ってきて!」
それでも腹の虫が治まらなくて今度は卵焼きを取って食べた。
「あー!それは!」
八重お手製だろ?
知ってる。
「悠仁、俺のをやろう」
「いいよ、なんかいろいろ足んないからもっと持ってくる」
脹相の申し出を断って、悠仁は再度料理を取りに行った。
八重は僕が部屋に行った後、何があったらああいうことになるワケ?
そんな素振りなかったじゃん。
視界に黙々と食事をする脹相が入る。
昨日、脹相も八重の部屋に行ったって悠仁は言っていた。
コイツがなんかしたんじゃないのか?
じゃなきゃ、こんな手の平返したみたいにコロッと変わるなんて考えられない。
八重が何を諦めて、何を決意したのかなんてわからない。
けど、どうせロクな考えじゃないだろ、それ?
だったら、マトモな答えが出るまではここで頭を冷やさせる。
例え、それが八重の本意じゃなくても、だ。
そのくらい看過できない存在なんだってことを自覚してもらわなきゃ困るんだよね。
悠仁がさっきよりも更に料理が盛られたトレーを手に戻ってきた。
僕はそこからヨーグルトがかかったフルーツを取り上げて平らげる。
「もー、五条先生、ホントにやめてー」
口を尖らせる悠仁を尻目に立ち上がる。
「さて、と…」
準備運動するように伸びをして、歩き出す。
歩の先には八重。
まだ逃がすわけにいかないコでも捕まえにいきますか、と。