第26章 【五条】永遠のコ
数日後。
その日は朝から八重を見かけなかった。
庭に行っても洗濯は干されていなかったし、朝飯も味気ないものばかりだった。
脹相の隣にもいない。
それとなく八重がいそうな場所に足を運んでみてもどこにもいなかった。
なんだ?
この変な感じ。
しばらくすると悠仁が慌てて脹相のところにやってきた。
なんでも、八重は体調を崩していて、今日一日部屋で休むってことらしい。
でも、大丈夫だからそっとしておいてあげよう。
月に一度はそうなるみたいだからって。
悠仁、それ、女の子のアレと勘違いしてない?
いや、完全にしてるでしょ。
1000年生きてる八百比丘尼ともあろう者が、そんなことでダウンするワケがない。
僕は何も言わずに悠仁の話を聞いていたけれど、聞いているのに悠仁が気付いた。
「五条先生もっ、今日は八重さんのところに行ったらダメだよっ」
はいはい。
わかった、わかった。
そう言われたら行くしかないじゃん?
他の皆が一日の行動を開始してから、僕は八重のところに向かおうとした。
けど、そういえば八重の部屋を知らなかった。
まずそこからか。
よく話してる補助監督の子に部屋を尋ねる。
「本当に体調が悪そうだったから、休ませてあげたいッス」
って、教えるのを渋られた。
え、僕相手に渋るの?
「大丈夫、大丈夫。ちょっと様子見に行くだけだから」
そう言ってもまだ渋る。
だから、彼女の目をまっすぐ見つめて、ちょっとだけ圧をかけて、
「お願い」
って言ったら、
「あ…えっと、寮の――」
って、ようやく教えてくれた。
ちょっとオトナ気なかったかなっとも思ったけど、これで八重のところに向かえる。
歩きながらながら、六眼に映んないのはめんどくさいな、って思った。
普通ならこんなに探し回らなくてもどこに誰がいるかくらい把握できる。
なんなら聞かなくても体調だってわかる。
でも、八重は違う。
この目で姿を見るまでは、この耳でその声を聞くまでは、そこにいるのか、それとも煙のように消えてしまっているのか、確かめる術はない。
悠仁がちゃんと様子を見に行ってる。
無事は確認できてる。
僕が改めて八重を訪ねる意味はない。
けど、ちゃんと僕が存在を確認しないと気が済まなかった。
ホント、めんどくさい。