第26章 【五条】永遠のコ
「八重」
そいつが低く名前を呼べば、放心していた八重はピクリと我を取り戻した。
「ゆっくりこっちに来い。後ろは見るな」
いやいや、僕のこと熊かなんかだと思ってんの?
そして、八重も僕の手をやんわりと外すと、「すみません」と申し訳なさそうに断りを入れてそいつの隣に収まった。
なんで僕が振られたみたいになってんの?
それはちょっと面白くなかった。
気を取り直してパーティが始めてもそうだった。
八重が甲斐甲斐しく料理を取り分けて持って行っても「ありがとう」も言わない。
顔面筋死んでんのかってくらい無表情で、むしろ仏頂面で食べて「美味い」も言わない。
それ作るのに八重がどんだけ手間かけてると思ってんだ?
しかも、八重も八重でそれでもにこやかに世話焼いてさぁ。
どんな亭主関白家庭だよ?昭和か!
僕はプリンの容器を煽って飲み込むと隣にいる悠仁に向き直った。
「で、あいつ、なんなの?悠仁の兄って何?」
「いや、あー、俺もそこら辺は詳しくはわからないんだけどー」と前置く。
「でも、俺がつらい時にずっと側にいてくれて…助かったんだよね。八重さんのことも大切に思ってるみたいだし」
あれで!?
目も合わせようとしてないのに!?
「あの九相図と八重ってどういう関係なの?」
「んー、なんか八重さんが九相図の誕生と封印に関わってて?それで脹相の身の回りのことをやってる?的な?」
なんだ、そのほぼほぼ不確定な情報提供は。
でも、それだけ聞くと八重の行動は罪悪感ベースってことだよな。
いや、待て。
待て待て。
呪胎九相図の誕生って150年前だったよな?
それ、おかしいでしょ。
「悠仁――」
そこら辺を悠仁に尋ねようとしたのと同時に悠仁は「八重さーん」と八重のところへ走って行ってしまった。
八重が初めて作ったプリンを絶賛している。
僕に褒められた時と同じように喜んでいる。
そうそう。
八重は正当に評価されるべきだと思う。
なのに、八重。
なんで脹相が何も言わずに食べているだけで、そんなに嬉しそうな顔をしてんの?