第25章 いとほし日々[後編]
「あの五条さん…」
八重が何かを決したように口を開いた。
「ん?告白?」
「いえ、お願い、でしょうか。脹相は五条さんと関わることに抵抗があるようで…渋谷でのことがまだ心にあるのかもしれません。なので、脹相に…その…あまり戯れにいかないでいただきたいんです。もう少し時間が経てば大丈夫だと思うんです」
「渋谷?んー、八重はさ、それだけだと思ってる?」
八重はそれ以外で二人が接触したということも聞いたことがないし、五条が帰ってきた後も見る限りでは仲違いしているようなところは見ていない。
ただ五条と場を同じくしていると脹相の機嫌が悪いというのだけはわかっている。
「?それ以外に何かあったのですか?」
「どうかなー?」
思わせぶりな五条の言葉に八重は「?」と首を傾げた。
「ふーん」
五条は顎に拳を当てて、心持ち視線を上に反らして「そこからなんだ」とボソリと呟いた。
「あの…何か?」
意味が分からず戸惑う八重に五条はニッと笑ってみせる。
「べっつにー。これから僕が手取り足取り教えてあげるから大丈夫♡」
わけは分かっていないが何か享受してもらえるらしいという雰囲気だけ受け取って「あ、ありがとうございます」と困ったように微笑んだ。
「うん、とりあえずハグしていい?」
「“はぐ”とは何でしょうか?」
「ホント、八重って横文字ダメだねー」
前置きを置きつつ、「ハグっていうのはねー」と今までよりも一回り大きな声で言うと八重の後ろから腕を回し、優しく包み込むように抱き締めた。
そして、耳元で。
「こういうこと」
と囁いた。
「“はぐ”とは抱擁のことですか」
「そうそう。八重、全然効かないじゃん」
「抱擁は何に効くのですか?」
「それはねー」
そう五条が答えようとした時に、校舎の2階、先程とは違う窓から虎杖が顔を出す。
「五条先生!ホントにやめて!脹相が百斂してるから!」
「大丈夫!僕、最強だから」
「八重さんに当たったらどーすんのっ?」
「それも込みで大丈夫♡」
「今から鍛錬なのでしょうか?」
「さー?僕はそんな約束してないけどねー」
「?」
「ま、今日はこの辺でやめとこうかな」
そう勝手に満足して五条は去っていくのだった。