第25章 いとほし日々[後編]
さっきはあんなに冷めた目で見てきたというのに、朝食を食べ終わる頃には五条はいつも通りの調子で八重に話しかけたり、接触してきた。
いや、接触に関してはいつも以上になったように八重は感じていた。
例えばこんな感じ。
朝食を食べ終えた五条は下膳された食器をまとめている八重のところまでやってくると、「八重〜」とのしかかるように肩を組んできた。
「朝飯のデザートさー、果物じゃなくてもっとガツンと甘いないの?」
かなりの近距離で顔を覗き込んでくる。
八重の視界は美しい蒼い目とバサバサと長いまつ毛のドアップで埋め尽くされた。
その目をまっすぐ見つめると八重は困ったように眉を垂れた。
「五条さんは甘い物を取りすぎなので朝は果物でとどめておいてください」
「でもさ、僕くらいになると果物くらいじゃ頭が起きないんだよねー」
ニコニコともう既に絶好調に見える五条だが、そんな風に言われてしまえば八重は要求を飲んでしまう。
「……じゃあ、午後のおやつ用のぷりんをお出しします」
「さっすが、八重!大好き♡」
「その代わり、午後のおやつがなくなりますよ?」
「その時はまた別のおやつ出してもらうから大丈夫♪出てこなかったら他の奴のプリン食べればいいし」
もう八重の脳裏には他の人に渡すはずだったプリンが食い散らかされている場面しか想像出来なかった。
「…それはやめてください」
「午後のおやつは八重の得意な和菓子でもいいよ〜」
と、額を八重の耳辺りに押し当ててグリグリと擦りつけるものだから八重は首を反らせて逃げようとするが、肩をがっちり組まれてるのでそれも出来ない。
「五条先生、俺のプリンあげるから八重さんのこと解放してやってよ。それに、ほら、さ」
苦笑いの虎杖が助け舟を出してくれた。
虎杖の目線が何かを示して五条に伝えているようだが、八重の体勢的に目線の先まで視界が及ばない。
五条はそちらに視線をやると至極楽しそうに笑った。
「はっ、羨ましいならお前もやってみろよ」
誰にそんな軽口を言っているのかわからないが、八重の羽交い締めが解かれた時にそこには誰もいなかった。