第25章 いとほし日々[後編]
食堂のセルフコーナーを整えていると、昨日八重の部屋を訪ねた三人が同じタイミングで食堂に入ってきた。
「あ、八重さん!」
真っ先に虎杖が駆けてくる。
「昨日はごめん!結局、五条先生も脹相も部屋に行ったよな?」
「いえ、大丈夫です……あの、御三方にお話があるのですが…」
「ん?あー、五条先生!脹相!八重さんが話あるってー!」
虎杖が大声で呼んでくれたおかげで二人ともすぐに来てくれた。
三人の男に視線を注がれて、誰を見ればいいのかわからない八重は三人それぞれの目を見てから頭を下げた。
「昨日はご心配いただき、ありがとうございました」
顔を上げるとにっこりと微笑んだ。
「とても、嬉しかったです」
微笑むことができた。
八重にとってみればあと約1ヶ月。
波風立てずに、穏やかに、皆の為に存在する。
そして、決戦が終わって、脹相も虎杖も笑って過ごせるようになったら〝繋がり〟も断って、そっといなくなる。
それでいい。
それでいいんだと思えば、微笑むことなど造作でもなかった。
そんな八重の微笑みを見て、虎杖は「へへっ!」と照れたように笑い、脹相はやれやれと言ったように表情を和らげた。
五条だけは面白くなさそうに口を真一文字に結んでいた。
「でもさ、脹相のあのスープはないんじゃない?」
「む…」
「いえいえ、とても温まりました。今度、私の作り方も聞いていただきますか?」
「……不味かったのか?」
「いいえ。でも、もっと美味しくなる余地があります。そうしたら悠仁くんに作ってあげられますよ」
「!」
「イヤだよ、俺は八重さんのスープがいい!」
「なぜだ、悠仁!」
「っもー、いーから飯食おーぜ」
そう言いながら、朝食を取りに向かう二人。
五条は彼らについて行かない。
あなたは行かないんですかと視線で見上げると、冷めた目で見下される。
「僕さ、『申し訳ない』って言うなって言ったけどさー」
声にもいつもの軽薄さがない。
「そんな『もういいんです』みたいな顔させるために言ったわけじゃないんだよ。何考えてんだか知んないけど、マジでこっちは笑えないからな」
昨日、『六眼に映らない』と言っていたのは嘘なのだろうかと思うほどの言葉に、八重は初めて彼の冴える碧眼を恐ろしいと思った。