• テキストサイズ

秘密の秘め事【裏夢の短編集】

第1章 炎柱は音柱を許さない 【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎】


「明日は任務で山へ向かうが、この味を思い出せば百人力だ! はっはっは!」
「……気をつけてね、杏寿郎さん。必ず、お帰りをお待ちしています」

願わくば、明日も、その次も。
この温かな食卓を、貴方と共に。
祈るような思いを込めて、はそっと、いつものように彼にお茶を差し出すのだった。

夕食後、夜の帳が下りる頃、煉獄は日輪刀を腰に差し静かに立ち上がった。

「では、行ってくる! 、千寿郎を頼んだぞ」
「はい、杏寿郎さん。……どうか、お気をつけて」

が玄関先で見送ると、煉獄は一度だけ力強く頷き、夜の闇へと消えていった。
その背中が見えなくなると、彼女は屋敷の隅々に藤の花のお香を焚いて回り、は静かに眠りにつくのだった。



翌朝、夜明けと共に玄関の開く音が響いた。
誰よりも早く目を覚ましていたは、すぐさま勝手口から湯殿へと走り、湯加減を確かめる。

「お帰りなさいませ、杏寿郎さん! お怪我はありませんか?」

廊下から声をかけると、煤と返り血でわずかに汚れた煉獄が、快活に笑いながら歩いてきた。

「ただいま戻った! 無傷だ、心配いらんぞ、!」
「よかった……。すぐにお風呂が沸きますから。先に着替えを準備しておきますね」
「いつも助かる! 任務の後の風呂は、何よりの贅沢だ!」

そう言って笑う煉獄の瞳には、微かな疲労の色が滲んでいた。
は胸を締め付けられる思いで、彼の羽織を受け取った。

「杏寿郎さん、少し……顔色が優れません。昨夜は激しい戦いだったのですか?」

ふと足を止めた煉獄は、をじっと見つめると、少しだけ声を和らげた。

「いや、お前の顔を見たら急に安心したのかもしれん。家とは不思議なものだな」
「……っ、そんなこと。……さあ、冷めないうちに入ってください」

顔が熱くなるのを感じながら、は彼を湯殿へと促したのだった。

/ 21ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp