第1章 炎柱は音柱を許さない 【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎】
数日後。
の体調が回復し、日常が戻った煉獄家だったが、一人、逃れられない運命を察している男がいた。
「よぉ、煉獄。……なんだ、その般若みてぇな顔は。派手に怖いぜ?」
蝶屋敷の裏手で、宇髄が引きつった笑いを浮かべる。
その目の前には、笑顔ながらも一切目が笑っていない、抜き身の刀のような威圧感を放つ煉獄が立っていた。
「宇髄! あの夜の『潜入調査』、実に多くのことを学ばせてもらった! 感謝する!」
「……お、おう。礼ならいいぜ、うまくいったんだろ?」
「うむ! おかげで大切な妻を得ることができた! だが……それとは別に、一般女性を遊郭へ売り飛ばし、あのような危険な薬を盛られる原因を作った貴様の落ち度は、柱として見過ごせん!」
煉獄はゆっくりと木刀を構えた。
その周囲の空気が、瞬時に熱風へと変わる。
「……お、おい、待て煉獄! 悪かったって! 悪気はなかったんだ、派手に謝るから――」
「問答無用! さあ、稽古の時間だ! 再起不能にならぬよう、気合を入れて受けろ!!」
「ちょ、待て! 煉獄――!!」
その後、蝶屋敷の裏庭からは、宇髄の派手な絶叫と、煉獄の「わっはっは!」という豪快な笑い声、そして凄まじい打撃音が日暮れまで響き渡ったという。
夕暮れ時、ボロボロになった宇髄を置き去りにして帰宅した煉獄を待っていたのは、温かな夕飯の香りと、「おかえりなさい、あなた」という、最愛の妻となったの優しい笑顔だった。
「うむ! ただいま戻った! 今日も飯がうまい!!」
煉獄の力強い声が、幸せに満ちた屋敷に響き渡ったのだったーー。