第5章 半冷半燃の少年は彼女を温めたい 【ヒロアカ 轟焦凍】
ショッピングモールの救護施設は、異様な熱気に包まれていた。
ヴィランは駆けつけたヒーローたちによって速やかに制圧されたが、放たれた「媚毒」の個性は、すでに被害者たちの体内で完成してしまっていた。
「……相澤先生、無理なのですか!?」
八百万の悲痛な叫びに、相澤は目を伏せ、首を横に振った。
「……抹消は『これから発動する個性』を止めるものだ。すでに体内に取り込まれ、変質してしまった生理現象には干渉できない。……奴の個性が解けるまで二十四時間待つか、あるいは……」
相澤は、個室の病棟へパートナーに付き添われて入っていく被害者たちを苦々しく見つめた。
そこから漏れ聞こえる艶めかしい吐息が、事態の深刻さを物語っていた。
未成年であるいのりは、衝立で仕切られたベッドの上で、シーツを掻きむしりながら荒い呼吸を繰り返していた。
「はぁ、っ……あ、つい……。……たすけ、て…っ」
かつて直哉に弄ばれた記憶が、個性の毒によって無理やり引きずり出される。
望まない快楽に脳が焼かれる恐怖に、彼女の目からは絶え間なく涙が溢れていた。
「……いのりっ!」
「轟、早く……! いのりちゃんが……もう、見てられないっ!」
連絡を受け駆けつけた轟は、芦戸たちのただならぬ様子と、相澤の沈痛な面持ちを見て、すべてを悟った。
「……相澤先生。事情は聞きました。……俺が、行きます」
「轟、……お前らは未成年だ。責任は俺が持つが、……お前のヒーローとしての未来にも関わるぞ」
相澤の鋭い視線に、轟は一歩も引かずに答え返した。
「未来なんて、あいつを今救えなきゃ意味がねえ。……あいつに、また『男を怖がる地獄』を見せたくねえんです」
轟は衝立を荒々しく開き、ベッドへと駆け寄った。