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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】

第5章 半冷半燃の少年は彼女を温めたい 【ヒロアカ 轟焦凍】


パンケーキの甘い余韻に浸りながら、紙袋を手に店を出た直後のことだった。
突如、ショッピングモールの広場に爆鳴響が轟き、悲鳴があちこちで上がった。

「――っ! ヴィラン!?」

彼女達は即座に戦闘態勢に入る。
周囲の建物が破壊され、逃げ惑う人々で現場は一瞬にしてパニックに陥った。

「ここは危険ですわ! 私たちが食い止めますから、いのりは避難誘導に従って外へ!」
「でも、皆さんは……っ」
「大丈夫よ、ケロ。私たちは仮免を持ってるわ。一般人の保護が最優先。……行って!」

梅雨に背中を押され、いのりは震える足で避難経路へと駆け出した。
背後からは八百万たちの個性による戦闘音が響いてくる。
けれど、運悪くその避難路の先から、ヒーローたちの包囲網を潜り抜けた一人のヴィランが逃げ込んできた。

「どけえッ! 邪魔をするなッ!!」
「っ……あ……!」

ヴィランは手に持っていた奇妙な形の噴霧器を、逃げ遅れた女性たちに向けて無差別に振りかざした。

「……これでも喰らって、大人しくしてなァ!」
「きゃあああ!!」

ヴィランの個性が発動し、赤紫色の霧がいのりを含む数人の女性たちを包み込んだ。吸い込んだ瞬間、熱を帯びた甘ったるい匂いが脳を直接揺さぶる。

「……な、に……これ、……熱い……っ」
「へへ……『媚毒』の個性だ。数分後には立ってらんねェほど熱くなるぜ……その隙にバックレさせてもらうわ!」

ヴィランは嘲笑いながら走り去っていった。
取り残された女性たちは、その場に力なく膝をつき、荒い呼吸を繰り返した。
いのりもまた、壁に手をついて身体を支えようとするが、足の力が驚くほど抜けていく。

「はぁ、……っ、あ、つい……。……からだ、が……おかしい、の……」

皮膚の内側を、無数の熱い指先で撫で回されているような感覚。
脳裏には、直哉に無理やり犯されていた時の記憶がフラッシュバックする。
けれど、あの時の絶望的な痛みとは違う。
身体が勝手に「何か」を求めて疼き、声を漏らさずにはいられないほどの激しい情動。

「……だれ、か……轟、さん……。助けて、……っ」

視界が白く霞み、意識が混濁していく中、いのりは震える手でスマートフォンを取り出そうとした。
だが、指先は思うように動かず、代わりに自分の肩を抱きしめることしかできなかった。
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