
第5章 半冷半燃の少年は彼女を温めたい 【ヒロアカ 轟焦凍】

轟の脳裏に、真っ白な氷の結晶が夕日に透けて輝く光景が浮かんだ。
それは、かつて緑谷に「君の力じゃないか」と言われた時に感じた、自分の力を肯定してもいいのだという、あの熱い感覚の続きのようだった。
「……それだ」
轟が静かに、しかし確かな声で言った。
「飯田。……個性を演出の主軸に置くのはどうだ。他科の奴らを圧倒するんじゃなく、……ただ、『綺麗だ』と思わせるためのステージを、俺たちの個性で作る」
「……! 轟くん、それは素晴らしい着眼点だ! まさに個性の平和的活用、ヒーロー科としての意義も深いぞ!」
「宝石みたいな光の中でのダンス……オシャレじゃん! 採用!」
「音楽も合わせやすいわ。幻想的なやつから盛り上がるやつまでいける!」
どんよりしていた空気が、彼女の一言で一気に爆発的な熱量へと変わった。
「……ありがとな、いのり」
轟は、騒ぎ出すクラスメイトたちの横で、隣の彼女を見つめた。
「お前に言われるまで、俺は自分の力を……そんな風に考えたことはなかった」
「……ふふ。轟さんの力はとても素敵だと思ったので」
真っ直ぐにそう言われ、轟は一瞬言葉を失い、不器用に視線を逸らした。
耳の先が少しだけ赤くなっている。
あの日、路地裏で絶望に濡れていた彼女がくれたアイディアが、今、轟の力に新しい意味を与えようとしていた。
文化祭当日、雄英高校の敷地内は命の躍動に満ちていた。
A組のステージは大成功だった。
轟が空中に放った氷の礫が、左側の熱で細かく砕かれ、七色の光を反射しながらダイヤモンドダストのように降り注ぐ。
その幻想的な光の中で、クラスメイトたちが眩い笑顔で踊る姿は、彼女の目には「自由」そのものに映った。
「……すごかった。轟さん、本当に綺麗でした」
ステージを終え、制服に着替えたばかりの轟が、観客席の隅で待っていた彼女のもとへ歩み寄る。
「……ああ。あんなに自分の力が『楽しい』と思ったのは、初めてかもしれない。お前のおかげだ」
轟は少し照れくさそうに口元を隠すと、彼女の細い手首に、そっと自分の手を添えた。
「これから、まだ時間あるだろ。……二人で回らないか」
「えっ……? でも、皆さんと一緒じゃなくて良いんですか?」
「……お前と二人で歩きたいんだ。ダメか?」
真っ直ぐな瞳で見つめられ、彼女は心臓が跳ねるのを感じた。
