第5章 半冷半燃の少年は彼女を温めたい 【ヒロアカ 轟焦凍】
翌日、雄英高校の会議室では異例の決定が下された。
「身元不明、かつ重度の精神的外傷……。本来なら警察の管轄だが、彼女の体内に観測された『微弱なエネルギー』が懸念材料だ」
相澤の言葉に、根津校長が茶を啜りながら頷く。
彼女の体内には、この世界の「個性」とは似て非なる、淀んだ、しかし確かな力――呪力と、それを運用するための不完全な術式が宿っていた。
「個性の暴走とは違う。だが、未知の力である以上、我々の監視下に置くのが最も合理的だね。轟くんが唯一の心身の安定剤(アンカー)になっているようだし」
こうして、彼女の1-A寮「ハイツアライアンス」での生活が始まった。
「……ここが、いま、俺たちが住んでいる場所だ」
轟に促され、おずおずと寮の共有ロビーに足を踏み入れた彼女は、その広さと、何より「男と女が同じ空間で笑い合っている」異様な光景に足を止めた。
「わあ、轟くんが連れてきた子、可愛い!」
「ちょっと芦戸さん、あんまりぐいぐい行くと驚かれちゃうわ!」
麗日や芦戸が駆け寄ってくると、彼女は反射的に轟の背後に隠れ、その服の裾をぎゅっと握りしめた。
「……すまねえ、こいつ、まだ大勢に慣れてなくて」
轟が静かにフォローを入れると、1-Aの面々は何かに察したように少し距離を取った。
その瞳に向けられるのは直哉のような侮蔑ではなく、純粋な好奇心と優しさだった。
「初めまして! 私は八百万百。困ったことがあったら何でもおっしゃってね。これ、良かったら……。お近づきの印に」
八百万が「個性」で作り出したのは、柔らかな手触りのクッションだった。
彼女はそれを恐る恐る受け取り、その温かさに目を見開く。
「……何も、していないのに……。くれるんですか?」
「ええ、もちろん! あなたへのプレゼントよ」
「……ありがとう、ございます……」
彼女が小さな声で礼を言うと、場がパッと明るくなった。