第5章 半冷半燃の少年は彼女を温めたい 【ヒロアカ 轟焦凍】
秋の夜の静まり返った病室。白いカーテンの隙間から、独特の緊張感が漂っていた。
轟は彼女のベッドの傍らに座り、その震える指先が自分の袖を掴んでいるのを感じていた。
そこへ、静かにドアが開く。入ってきたのはトレンチコート姿の男、塚内直正と、その同僚の三茶だった。
「……っ!?」
彼女が短い悲鳴を上げ、轟の背後に隠れるように身を縮めた。
「……おい、大丈夫だ。警察の人だ」
「で、でも、……あ、あの……!」
彼女が指差したのは、猫の頭部を持つ警察官、三茶だった。
三茶は困ったように眉を下げ、慌てて足を止める。
「ああ、驚かせてごめんね。私は三茶というんだ。これでも一応、警察官なんだけど……」
「……ばけ、もの……?呪霊…? 誰かの術式……?」
彼女の呟いた言葉に、塚内が鋭く眉を動かした。
「……『呪霊』? 三茶くん、一旦下がっていてくれ。彼女にとって、異形型の個性は刺激が強いようだ」
「……了解です。廊下で控えています」
「お嬢さん。私は警察の塚内だ。君を傷つけるつもりはない。……少し、君のことを聞かせてもらえるかな? 君がどこから来たのか、そして……君をあんな目に遭わせた『直哉』という人物について」
「…………」
彼女は怯えた目で塚内を見つめたが、隣にいる轟の体温を感じて、途切れ途切れに己れの事を話し始めた。
「ゼンイン……。聞いたことのない地名、あるいは組織名だな。そこでは君はどんな立場だったんだ?」
塚内の問いに、彼女は下腹部を強く抱きしめ、吐き捨てるように言った。
「……『胎』です。直哉さん……、禪院家の次期当主の子を産むための、器。毎日、毎日……ただそれだけのために、直哉さんに……」
その言葉が出た瞬間、病室の温度がわずかに上がった。
轟が左拳を強く握りしめたせいだ。
「……直哉さんにいつも言われたました。『お前みたいな出来損ないは、俺の種を受けて強い呪術師を産むことでしか、存在価値を証明できんのや』と……。逆らえば、もっと酷く……」
彼女の瞳から、大粒の涙が溢れ出した。塚内は手帳を握る手に力を込めた。
「…塚内さん。彼女、この世界の常識を何一つ知らない。『個性』も『ヒーロー』も、三茶のこともだ」
「……ああ。嘘を言っているようには見えない」
塚内は真剣な表情で彼女に向き直った。
