第10章 彼は彼女を取り戻したい 【ONE PIECE ロー】
騒乱のシャボンディ諸島。
海軍の包囲網を「ROOM」で切り刻み、混乱に乗じて一味は自分たちの潜水艦へとたどり着いた。
「お前ら、 一旦島を離れる、すぐに潜航するぞ!」
ローの鋭い号令とともに、静かに海中へと姿を消した。
ようやく訪れた静寂。
だが、医務室に連れてこられたいのりの震えは、激しくなる一方だった。
「……いのり、顔を上げろ。もう大丈夫だ」
ローが歩み寄り、彼女を強く抱きしめた。
しかし、いのりはその胸に顔を埋めることができず、力なく身をよじって拒絶した。
「……だめ、です……ローさん、触らないで……っ」
「……何がだめだ。怪我の手当をさせろ」
「汚れてるんです……! 私、あの場所で、男の人に……あんなこと、されて……」
いのりは涙を流しながら、オークションの舞台裏で起きた惨劇を、断片的に口にした。
天竜人に売られる前、下卑た男に蹂躙された事実。
「そんな私が……みんなのところに、ローさんの隣にいていいはずがない……っ!」
ローは無言で彼女を見つめた。
その瞳には、怒りよりも深い、自分自身への苛立ちが滲んでいた。
「……悪かった。俺が側を離れたせいだ」
掠れた声でそう詫びると、ローは彼女の顎を指先でそっと持ち上げた。
怯える彼女を安心させるように、ゆっくりと顔を近づけ、その唇を重ねようとする。
だが——。
いのりは顔を背けてローを突き飛ばした。
「……っ、嫌! しないで……お願い……!」
「……拒むな。俺はお前を汚いなんて思ってねェと言ってるだろ」
「そうじゃないんです……! 私、あの時……口まで、汚されて……! ローさんに、そんな汚れがうつるなんて、耐えられない……っ!!」
情事の際、男に強要された屈辱を思い出し、いのりは自分の口を両手で覆って激しく泣きじゃくった。
その言葉を聞いた瞬間。
ローの中で、ギリギリと保たれていた理性の糸が、凄まじい音を立てて弾け飛んだ。
「……ふざけるな」
低く、地を這うような怒声。
ローは逃げようとするいのりの両手首を掴み、背後の壁に乱暴に押し付けた。