第9章 彼は遊女の彼女を手放したくない 【鬼滅の刃 不死川実弥】
「あ、ぁぐ……っ! や、めて、……お願いっ!」
部屋の中に響いたのは、いつもの必死な「演技」ではない、芯から震える悲鳴だった。
そこには、馴染みの常連客が彼女を組み伏せ、なりふり構わずその奥を貫いている光景があった。
男は薬の入った酒には目もくれず、彼女を組み伏せるなり強引に奪ったのだ。
「ははっ、やっと捕まえたぞ! 予想通りの極上だ……ナカが、吸い付いて離さねぇ!」
「ひぅ、あ、あぁぁッ! ……やだ、……はい、って、……っ」
いのりの瞳は涙で溢れ、焦点が定まっていない。
幾度となく蹂躙されたあの痛みが、今の現実と混ざり合う。
「あ、ぁ……っ、お、奥、……当たって、……苦し、……ッ!!」
「いい声だ! ほら、もっと腰を振れよ!」
不死川は屋根の瓦を指先が白くなるほど握りしめた。
今は隠密任務の最中だ。
ここで騒ぎを起こせば宇髄の計画が台無しになる。
(クソが……ッ! なんて顔させてやがる……!)
不死川の視線の先で、彼女は男の激しい突き上げに翻弄され、抗いきれない快楽と絶頂の恐怖に喘いでいた。
直哉に仕込まれた身体が、心に反して男の熱を受け入れ、きつく締め上げている。
「ふ、あ……っ! ん、ぅううッ!!」
彼女が大きくのけ反り、絶頂を迎える。
その瞬間、男もまた彼女の体内に熱いものをぶちまけた。
「……はぁ、はぁ。……凄まじいな、お前」
男が満足げに重なり合う中、彼女は幽霊のような虚ろな瞳で天井を見つめていた。
その頬を伝う涙を見て、不死川は思わず刀の鍔を親指で弾いた。
(……あいつ、あんな目をして)
直哉という男に壊され、ここでもまた壊されようとしている。
不死川は自分の胸の奥が、焼けるような怒りと、名もなき感情で疼くのを感じた。
しばらくして客が部屋を去り、彼女が一人で震えながら衣類を整えようとしたその時。
「……おい」
窓から飛び込んできた影に、いのりは短く悲鳴を上げた。
しかし、それが不死川だと気づくと、彼女は顔を覆って泣き崩れた。
「不死川、様……。私、守れなかった…。また、汚れちゃった…」
不死川はいのりの肩を掴もうとして、その手が血の滲むほど握り締められているのを見て止めた。
「………明日、ここから出してやる」
それが、不器用な男にできる精一杯の「約束」だった。
