第9章 彼は遊女の彼女を手放したくない 【鬼滅の刃 不死川実弥】
「あの方は……私を自分の持ち物のように扱い、毎日のように無理矢理……。やっと逃げられたと思ったのに、また別の籠に入れられただけだった。だから……あの人に教え込まれた技で、なんとか、中だけは許さずに……っ」
いのりの必死の告白に、不死川は吐き捨てるように言った。
「チッ、どいつもこいつも胸糞悪い……。無理矢理働かされてるってのは、本当なんだな?」
「はい……。私、本当は、こんなこと……したくありません」
宇髄は不死川と視線を交わすと、ふっと口角を上げた。
「派手に面白いことになってきたじゃねぇか。潜入任務のついでだ、お前の件も調べてやるよ。……その代わりに、お前さんに頼みたい事がある。……後、その薬、俺たちの前ではもう使うな。俺たちがここにいる間は、誰もあんたを傷つけさせねぇ」
彼女は驚いたように二人を見上げた。
直哉のような支配でも、客のような欲望でもない、真っ直ぐな意志を持った男たち。
絶望しかなかった京極屋の夜に、初めて「救い」の兆しが見えた瞬間だった。
宇髄との取引で、京極屋の内情を探る「協力者」となった。
不死川は苛立っていた。
任務の合間、宇髄と交代で彼女の様子を見に来たが、案内されたのは別の遊女の部屋だった。
「あァ? いのりに客がついてるだと?」
「はい、上客の旦那様でして……。さあ、こちらの子も器量良しで……」
女将の言葉を遮り、不死川は店を飛び出した。
胸騒ぎがしたのだ。
あの女はウブな癖に、自分を守るためには睡眠薬を盛るような危うい真似をする。
もし失敗していたらーー。
不死川は建物の影から屋根へと跳躍した。
気配を殺し、いのりの部屋の窓をわずかに開けて中を覗き込んだ。