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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】

第9章 彼は遊女の彼女を手放したくない 【鬼滅の刃 不死川実弥】


いのりは震える手で、男の帯を解いた。
直哉に無理矢理教え込まれた、男を悦ばせるための知識。
それは彼女にとって屈辱の証でしかなかったが、今は唯一の武器だった。 

「ひっ……ふぅ、……っ」

彼女は自ら、男の熱を帯びた部分に触れる。
直哉にされたように、けれど自分ができる精一杯の手つきで。

「お前、震えている割には……随分と、吸い付くような指使いだな……」
「……っ、ん、……はぁ」

いのりは口内を男の熱で満たされ、嗚咽を漏らしそうになりながらも、必死に奉仕を続けた。
膝をつき、必死に頭を動かすその姿は、客の男には「初心な娘が懸命に尽くしている」ように映った。
実際には、いのりは一刻も早く薬が効くことだけを願っていた。
男の意識が混濁し、その重たい体が自分から離れる瞬間を。

「あぁ……っ、いい、ぞ……。お前、最高だ……」

男の呼吸が荒くなり、腰が跳ねる。
いのりはさらに速度を上げ、男の意識を快楽の絶頂へと追い込んでいく。
本番を許す前に、彼を眠りの底へ突き落とすために。

「……ッ、はぁ、……なんだ、急に、眠気が……」

ついに薬が効き始めたのか、男の動きが鈍くなった。
絶頂と睡魔が同時に襲った男は、いのりの口の中で果てると同時に、そのまま糸が切れたように横倒しになった。

「……はぁ、はぁ、……っ」

口の端を拭い、いのりは部屋の隅へ後退して荒い息を吐いた。
男の寝息を確認し、ようやく彼女の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。

(凌げた……。今日は、守れた……)

直哉の呪縛から逃れた先で、いのりは皮肉にも直哉に仕込まれた技術で自分を守った。
この先、いつまでこの綱渡りが続くかはわからない。
それでも、今はただ、この静かな一人の時間を噛み締めることしかできなかった。




京極屋に、一人の不思議な遊女の名が広まるのに時間はかからなかった。

『決して中へは入れさせぬが、極上の夢を見せる』

その噂は、禅院の家で直哉に執拗に仕込まれた、いのりにとっては忌まわしいはずの「技術」が形を変えたものだった。
彼女は、直哉の激しい情動を受け止めるためだけに磨かされた己の肢体を、今は生き延びるための楯としていたのだった。



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