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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】

第8章 第8章 口下手な彼は彼女と暮らしたい 【鬼滅の刃 冨岡義勇】



「いのりさん、怖がらなくていいですよ。この無作法な男に無理やり連れてこられたのでしょう? 蝶屋敷に戻りましょう。あそこなら安心ですし、美味しいお菓子もあります」

一方、義勇は何も言わなかった。
ただ、捨てられた仔犬のような、あるいは世界にたった一人取り残されたような、酷く寂しげな瞳でじっといのりを見つめている。
その瞳は「行かないでくれ」と必死に訴えているようだった。


「さあ、いのりさん。選んでください。蝶屋敷に来るか、この……むさ苦しい男の所に残るか」


いのりは、しのぶの優しさと、義勇の不器用な執着を天秤にかけた。
かつての地獄から救い出し、汚れ果てた自分を「清い」と言って抱きしめてくれた男。
彼をここで一人にしたら、この人はまた自分を責めて、孤独に戻ってしまうのではないか。

「……しのぶさん、ごめんなさい」

いのりは震える手で、そっと義勇の羽織の裾を掴んだ。

「私……ここに残ります。冨岡さんの側に、いたいです」
「…………」

義勇の瞳が、僅かに揺れた。

「……本当ですか? いのりさん、この男、本当に言葉が足りないし、友達もいないし、色々と大変ですよ?」

「ふふ、はい。わかってます。でも……私、この人に救われたから。今度は私が、この人の側にいたいんです」

しのぶは深く、深いため息をつき、天を仰いだ。

「……もう、勝手になさい! その代わり冨岡さん。もし少しでも彼女を泣かせたら、その時は本当に毒で溶かしますからね!」

「……善処する」

「『善処する』じゃありません! ああもう、腹立たしい……!いのりさん!いいですか!…偶には蝶屋敷に顔を見せに来て下さいね!!」

怒り心頭のまま去っていくしのぶを見送った後、部屋には再び二人の時間が戻った。
義勇は、まだ裾を掴んでいるいのりの手を、今度は自分の大きな手で包み込んだ。

「……本当にいいのか……俺で……俺は口が上手くない」
「知ってます。……でも、そんな義勇さんが大好きですから」


いのりが微笑むと、義勇は彼女を壊れ物を扱うように抱きしめ、その額に優しく口付けを落とした。


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