第8章 口下手な彼は彼女と暮らしたい 【鬼滅の刃 冨岡義勇】
「……ちょっと待てよ。おい、待て待て待て。今なんて言った炭治郎。……冨岡さん? 水柱の? あのツンツンしたイケメンが、いのりちゃんに貢物をしたってことか? あぁん!?」
「あ、善逸、急に大きな声を出したら傷に響くぞ」
「うるっっっさい! 響いてもいい! 爆発しろ! なんだその甘い空気は! 炭治郎、お前が嗅ぎ取ってるのは『愛の匂い』だろ! 幸せの匂いだろ! 俺にはわかるんだ、お前の鼻より俺の耳の方が、二人の間の不純な音を正確に拾ってるんだからなッ!!」
善逸は布団を跳ね除け、のたうち回りながら叫んだ。
「あああああ! いのりちゃんみたいな可愛くて素敵な子が、なんであんな暗い男と! 柱だからか!? 強いからか!? 俺だって頑張ってるだろ! なあ、俺にその紐くれない!? 俺がもっとピンク色の可愛いやつ買ってあげるから!」
「善逸さん、落ち着いてください……! これは冨岡さんが私を思って選んでくれたものだから、誰にもあげられません」
いのりが困ったように、けれどもしっかりと髪紐を握りしめて微笑むと、善逸は「ひ、拒絶の音まで美しい……!」とガックリ膝をついた。
「騒がしいですねぇ」
そこへ、薬湯を持ったしのぶが静かに入ってきた。
「冨岡さんも、あんなに不器用なのに、いのりさんのこととなると随分と熱心ですから。……毎日その紐をつけているのを見たら、あの人も内心、小躍りして喜ぶでしょうね」
「しのぶさんまで……!」
顔を真っ赤にして俯くいのりを見て、炭治郎はニコニコと笑い、善逸だけが「俺も小躍りさせろよおぉ!」と虚空に向かって吠えていた。