第7章 潜入捜査官の彼は彼女に助けられる 【名探偵コナン 諸伏景光】
重なる唇は、羽毛のように柔らかく、そして温かい。
「愛してる。……もう、どこへも行かせないよ」
頭上で上がる花火の音に紛れ、二人は恋人を飛び越え本当の「夫婦」としての誓いを交わした。
呪いも、闇も、もうここには届かない。
二人の前には、穏やかな海と、確かな未来だけが広がっていた。
夜空を震わせる花火の轟音は、二人を包む深い静寂の幕となって、周囲の喧騒を遠ざけていた。
重なり合う唇から伝わるのは、切ないほどの熱量。
景光はいのりの細い腰を引き寄せ、何度も、確かめるように口付けを繰り返した。
「……ここでは、足りない」
熱を帯びた声が耳元を掠める。
景光の瞳には、かつてないほどの独占欲と、深い情愛が揺らめいていた。
いのりはただ、彼のシャツの胸元を強く握りしめ、熱い吐息を漏らすことしかできなかった。
家までの道のりをどうやって戻ったのか、記憶は曖昧だった。
古民家の畳に月明かりが差し込む中、景光はいのりを壁際へと追い詰め、包み込むように抱きしめた。
「怖くないか? ……俺は、君が思っているほど、綺麗な男じゃないかもしれない」
かつての凄惨な記憶が、一瞬だけいのりの脳裏をよぎる。
しかし、目の前にいる男の瞳にあるのは、自分を汚そうとする悪意ではなく、壊してしまいそうなほど強い慈しみだった。
「景光さんなら、怖くありません……。私を、あなたでいっぱいにしてください」
その言葉が、景光の理性を最後の一線で断ち切った。
解かれた帯が畳の上に滑り落ち、藍色の浴衣が肩から静かに零れ落ちる。白磁のようないのりの肌に、祭り提灯の残光が淡い影を落とした。
「……綺麗だ」
景光の熱い指先が、直哉に付けられた古い傷跡をなぞる。
それは過去を浄化するような、あまりに優しい愛撫だった。
彼は彼女の肌の至る所に、印を刻み込むように唇を寄せていく。
「もう誰にも触れさせない。君を苦しめるものは、全部俺が忘れさせてあげるから」