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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】

第7章 潜入捜査官の彼は彼女に助けられる 【名探偵コナン 諸伏景光】


夏の夜の空気は、潮の香りと出店から漂う香ばしい匂いに包まれていた。

「……あの、景光さん。変じゃないでしょうか」

家の前で待っていた景光は、振り返った瞬間に言葉を失った。
島の人から「旦那さんを驚かせてやりなさい!」と半ば強引に贈られた藍色の浴衣。
慣れた手つきで結んだ帯と、うなじにこぼれる後れ毛が、提灯の光に照らされてひどく艶っぽかった。

「……変なわけないだろう。むしろ、綺麗すぎて直視できないな」
「もう!からかわないでください」

景光は少し照れくさそうに笑うと、自然な動作で彼女の柔らかな手を握った。

「はぐれないようにね。…… 行こうか、いのり」

祭りの会場に足を踏み入れると、島の人たちの洗礼が待っていた。

「おっ、美男美女の新婚さんじゃないか! ほら、焼きそばサービスしとくよ!」
「こっちも持っていきな! 二人の仲に当てられちまうよ、全く!」

行く先々で「夫婦」として扱われ、山盛りのサービスを受ける二人。
いのりは真っ赤になって俯き、景光は苦笑いしながらも、握った手だけは決して離さなかった。

「……すみません、皆さん勘違いされていて」
「いいよ。今は、その勘違いに甘えていたい気分なんだ」

景光の少し低い声に、いのりの心臓が跳ねた。


やがて祭りのクライマックス、花火が上がる時間が近づく。
景光は賑やかな人混みを避け、波音だけが聞こえる静かな高台へと彼女を連れ出した。

ーードーン!

夜空に大輪の華が咲き、彼女の横顔を鮮やかに彩る。

「……綺麗ですね」
「ああ、本当に。……でも、花火よりも君はもっと綺麗だ」

景光の真剣な眼差しに、いのりは息を呑んだ。
彼は彼女の両肩に手を置き、静かに言葉を紡いだ。

「島の人たちは新婚だって笑うけど……俺は、本当にそうなれたらいいって思ってる。もう、スコッチとしてでも、守る対象としてでもなく……一人の男として、君の隣にいたいんだ」

彼女の瞳から、一筋の涙がこぼれた。
かつて直哉に踏みにじられた「愛」とは違う、魂が震えるような深い慈しみ。

「……私、幸せすぎて……どうしたらいいか」
「……本当に、俺でいいの?」
「景光さんがいいんです。あなたじゃなきゃ、嫌です」


その言葉を聞くと、景光は愛おしさを堪えきれず、彼女を優しく抱き寄せ、口付けを送った。




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