第7章 潜入捜査官の彼は彼女に助けられる 【名探偵コナン 諸伏景光】
テーブルには、温め直された湯気を立てる料理が並んでいた。
景光と彼女がようやく静かな時間を共有し始めた、その時だった。
「ヒロ!! 無事なのか!?」
玄関の鍵が荒々しく開け放たれ、血相を変えた降谷零がリビングに飛び込んできた。
その形相は鬼気迫るもので、彼女は思わず肩を震わせて立ち上がる。
「……ゼロ。驚かせないでくれ。見ての通り、ピンピンしてるよ」
「ピンピンしてるだと……? 組織の包囲網をどう抜けたのかも、安否の連絡すら寄越さずに、お前は……!」
降谷の視線が、並んだ料理と、景光の隣で震える彼女、そして何より景光の穏やかな表情に止まった。
安堵が怒りを上回り、彼の額には青筋が浮かぶ。
「連絡一本入れる暇くらいあっただろう! ライが『逃げられた』と言ったきり、どれだけ最悪の事態を想定したと思っているんだ!」
「ごめん、本当に。……でも、まずはこの御守りの主に報告しなきゃと思ってね」
景光が申し訳なさそうに笑いながら、彼女の肩を抱き寄せた。
降谷は毒気を抜かれたように大きな溜息をつき、乱れた髪をかき上げた。
「……はぁ。全く、君という男は。俺たちがどれだけ心配していたか、少しは考えたらどうだ」
「わかっているよ。だから、今こうして彼女へ埋め合わせをしている最中だ。……ゼロも、まだ食べてないんだろ? 一緒にどうだ」
景光の誘いに、降谷はまだ納得のいかないような顔をしながらも、椅子に力なく腰を下ろした。
「……お言葉に甘えさせてもらうよ。胃がキリキリして、それどころじゃなかったからな」
「あ、あの、すぐにお皿とご飯、持ってきますね」
彼女が慌ててキッチンへ向かうと、降谷はその背中を見送りながら、小声で景光に囁いた。