第7章 潜入捜査官の彼は彼女に助けられる 【名探偵コナン 諸伏景光】
その告白に、景光の思考が一瞬停止した。
ライは銃を下ろし、景光の胸元で鈍く光る御守りに目をやった。
「……君には、まだ帰るべき場所があるんだろう? その不細工なジャムも、その御守りの主が引き寄せた幸運かもしれないな」
「……ライ、お前……」
「行け。ここは俺が引き受ける。……生き延びろ、スコッチ」
ライはそう言うと、景光が逃げ出すための時間を稼ぐように、あさっての方向へ向かって銃声を一発放った。
「――スコッチ!!」
その時、階段を駆け上がってきた足音の主が叫んだ。
降谷だった。
ライは背後を振り返らず、冷徹な声を投げかける。
「遅かったな、バーボン。スコッチには逃げられた。……追っても無駄だ、夜の闇に消えたよ」
「嘘をつくな! ライ、貴様……っ!!」
降谷がライの襟元を掴んで詰め寄るが、ライはそれを冷たく振り払い、景光が消えた暗闇とは逆の方向へと歩き出した。
一方、景光は夜風を切って走り続けていた。
胸の奥で、彼女が持たせてくれた御守りが不思議と熱い。
「……あいつに、伝えなきゃな」
死ぬために引いた引き金が動かなかったのは、呪術による「小さな幸せ」だった。
けれど、大切に思う人の元へ生きて帰れる。
彼にとって、それはどんな奇跡よりも大きな幸せだった。
彼は夜に紛れ、彼女が夕飯を作って待っているはずの、あの温かい灯りの下へと急いだ。