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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】

第7章 潜入捜査官の彼は彼女に助けられる 【名探偵コナン 諸伏景光】


その手には、およそ裏社会の人間には似つかわしくない、有名店の紙袋が握られていた。

「……ゼロ。また来たのか」
「ひどい言い草だな。任務の合間を縫って、君たちが飢えていないか心配で見に来てあげたんだ。はい、これ。彼女の分も含めて、差し入れだ」

降谷は慣れた手つきでテーブルに高級そうなケーキの箱を置いた。
そして、エプロン姿の彼女と、それを見て少しだけ鼻の下を伸ばしている景光を、ニヤニヤと眺めた。

「……何だよ、その目は」
「いや? まるで新婚家庭にお邪魔してしまったような気分だなと思ってね。あのスコッチが、かいがいしく世話を焼かれて、毒気を抜かれた顔をしてる」
「揶揄うのはよせ」

景光が少し顔を赤くして視線を逸らすと、降谷は彼女の方へ向き直った。

「君も大変だね。こんな不器用で、自分を大事にしない男の面倒を見るのは。どうだい、もっとスマートな男に乗り換える気はないかい?」
「えっ……あの、私は……!」

突然の冗談に彼女が真っ赤になって固まると、景光がすかさず割って入った。

「ゼロ! 彼女を困らせるな」
「おやおや、独占欲まで発揮するとは。……まあ、安心しなよ。君が彼を看病してくれたおかげで、僕も助かってる。組織(あっち)には上手く報告しておいたから、しばらくはここで『新婚ごっこ』を楽しんでるといい」

降谷はそう言って楽しげに笑うと、彼女に向かってウィンクを一つ送った。

「彼はね、君が作ったものなら何でも喜んで食べるよ。特に、少し甘めの味付けに弱いんだ。覚えておくといい」
「余計な情報を教えるな……」


景光の抗議を笑い飛ばし、降谷は嵐のように去っていった。
静まり返った部屋で、二人は顔を見合わせた。

「……すみません、お友達を困らせてしまったでしょうか」
「いや、あいつが勝手に楽しんでるだけだ。……でも」

景光は、降谷が置いていったケーキの箱を見つめ、それから彼女の瞳をじっと見つめた。

「あいつの言った通りだ。……君がここにいてくれて、本当に、救われてるよ」


呪われた家系でも、冷酷な組織でもない、二人だけの穏やかな時間がそこには流れていた。


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