第7章 潜入捜査官の彼は彼女に助けられる 【名探偵コナン 諸伏景光】
深夜のセーフハウス。
電子錠が弾かれる鋭い音と共に、扉が乱暴に開かれた。
眠りについていた彼女は、飛び起きるようにしてリビングへ向かう。
「……っ、スコッチさん!?」
視界に飛び込んできたのは、肩を血に染めてぐったりとしたスコッチと、彼を支える見知らぬ金髪の男――バーボンだった。
「誰だ、お前は」
バーボンの声は氷のように冷たかった。彼はスコッチをソファに横たえながらも、その鋭い眼光を彼女に向け、腰の銃に手をかける。
「……あ、あの……私は……」
「スコッチ、どういうことだ。こんなところに女を囲っていたのか?」
返事はない。
スコッチは出血の多さに意識を失っていた。
彼女は恐怖に足がすくみそうになりながらも、愛用していた青いジャケットが真っ赤に染まっているのを見て、無我夢中で駆け寄った。
「どいてください! 傷を見せないと……!」
「待て、お前……」
バーボンの制止を振り切り、彼女は震える手でスコッチのシャツを肌蹴させる。
直哉に虐げられていた頃、手当を自分で行うしかなかった彼女にとって、傷の手当ては身に染み付いた習慣だった。
「……ひどい、弾が掠めてる……。すぐに洗って止めないと」
「……」
バーボンは驚いたように目を見開いた。
彼女の瞳にあるのは、自分への恐怖ではなく、ただひたすらにスコッチ――諸伏景光を案じる、純粋で深い情愛だったからだ。
「……わかった。君、救急箱を持ってこれるか。ここは僕が圧迫止血する」
「はい……! すぐに!」
それからの数時間は、嵐のような静けさだった。
彼女がテキパキとお湯を用意し、清潔な布を差し出す。バーボンはその手際の良さに内心舌を巻きながら、手際よく弾痕を処置していった。
ようやくスコッチの寝息が安定した頃、深夜のキッチンで二人は向かい合った。
「……驚いたよ。あの堅物のスコッチが、こんなに綺麗な女性を隠していたなんてね」
バーボンは皮肉げに、けれど少しだけ毒気を抜いた様子でコーヒーを啜った。