第6章 正義感の強い彼は彼女を護りたい 【名探偵コナン 降谷零】
彼女は再び降谷の胸に顔を埋め、今度は安堵の涙を流した。
禪院家で地獄のような日々を過ごしていた彼女が、初めて手に入れた『誰かに必要とされる自分』
「……おかえりなさい、降谷さん。……ずっと、待ってました」
「ああ……。ただいま」
足元でハロが二人の無事を確認するように小さく鳴き、寄り添う。
死の淵を乗り越えた英雄と、彼を奇跡で救い出した少女を、明け方の柔らかな光が静かに包み込んでいた。
彼女に促されるまま風呂で汚れを落とし、傷の手当てを受けた。
張り詰めていた神経が限界を超えたのは、清潔な寝着に着替え、彼女の香りが微かに移ったソファに腰を下ろした瞬間だった。
「……降谷さん、お疲れ様です。少しでも横になって……」
心配そうに顔を覗き込む彼女の腕を、降谷は無意識に掴んでいた。
吸い寄せられるようにその細い腰を引き寄せ、彼女の腹部に顔を埋める。
「……降谷、さん?」
「すまない。……このまま、少しだけ……」
トリプルフェイスを使い分け、国という重責を背負い、死線を潜り抜けてきた。
そのすべてを忘れさせてくれるような、柔らかくて、温かい陽だまりのような体温。
降谷は彼女を抱きしめたまま、吸い込まれるように深い、深い眠りに落ちていった。
数時間後。
カーテンの隙間から差し込む昼下がりの光が、降谷の瞼を叩いた。
(……ここは……)
ぼんやりとした意識の中で、腕の中に驚くほど柔らかく、重みのある「何か」を感じて、降谷の思考が急速に覚醒した。
「……っ!」
目を見開くと、そこには自分の腕の中にすっぽりと収まり、胸元に顔を寄せて眠っている彼女の姿があった。
降谷のたくましい腕が、彼女の小さな体を逃がさないようにがっちりとホールドしている。
(……彼女を抱きしめたまま寝ていたのか……?)
冷静になろうと努めるが、意識すればするほど、五感が鋭敏になっていく。
鼻先をくすぐる、石鹸と彼女自身の混じり合った甘くて優しい匂い。
薄い生地越しに伝わってくる、女性特有のしなやかで柔らかな曲線の感触。
事件解決直後のアドレナリンが完全に抜けきっていない肉体は、そのあまりの心地よさと刺激に、降谷の理性を裏切る反応を見せ始めた。