第6章 正義感の強い彼は彼女を護りたい 【名探偵コナン 降谷零】
事件が収束し、ようやく夜の帳が下りた頃。
セーフハウスの重い扉の鍵が、ゆっくりと、どこかぎこちない音を立てて回った。
玄関の明かりがついた瞬間、そこには祈るように手を組み、立ち尽くしている彼女の姿があった。
「……ただいま。遅くなって、すまない」
入ってきた降谷の姿は、壮絶という言葉すら生ぬるかった。
「……っ!」
彼女は声にならない声を上げると、ふらつく足取りで降谷に駆け寄り、その胸に飛び込んだ。
「降谷さん…! 良かった、生きてて……っ、良かった……!」
その小さな肩が激しく震え、降谷の汚れきったシャツを涙で濡らしていく。
降谷は一瞬、自分の汚れが彼女に移るのを躊躇うように両手を浮かせたが、やがて諦めたように彼女を強く抱きしめ返した。
「……ああ。生きてる。……君のおかげだ」
降谷は震える指先で、内ポケットからあのお守りを取り出した。藤色の布地は熱で焼け焦げ、あんなに綺麗だった刺繍はボロボロに解けていた。
「これ、ダイブした瞬間に……信じられないくらい熱くなった。まるで君が、そこまで追いかけてきて、僕の手を引いてくれたみたいだったよ」
彼女は涙に濡れた顔を上げ、ボロボロになったお守りを愛おしそうに見つめた。
「……私の術式、本当に、役に立ったんですね。出来損ないの、ちっぽけな祈りだったのに」
「出来損ないなんて、二度と言わないでくれ」
降谷は彼女の頬に手を添え、親指で涙を拭った。
その瞳には、仕事で見せる冷徹な鋭さは欠片もなく、一人の男としての深い情愛が宿っていた。
「僕はこれまで、この国を守ること、ただそれだけを生きる糧にしてきた。……『僕の恋人は、この国だ』と、そう思って今日までやってきたんだ」
降谷は少しだけ言葉を切り、彼女の額にそっと自分の額を寄せた。
「けれど、あのアスファルトに叩きつけられる寸前、僕の頭に浮かんだのは……この部屋の明かりと、君の顔だった。……守りたかったのは、国だけじゃない。君がいる、この場所だったんだ」
「降谷さん……っ」
「君は、僕にとって最強の『守り神』だ。……ありがとう。僕を、帰らせてくれて」