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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】

第6章 正義感の強い彼は彼女を護りたい 【名探偵コナン 降谷零】


激しいカーチェイスの末、降谷が放った言葉は「僕の恋人は、この国さ」というあまりに重く、苛烈な覚悟だった。


凄まじい轟音と共に、降谷の乗った白いRX-7が宙を舞った。
重力から解放された一瞬、車内を支配したのは、死の直前特有の、鼓動さえ止まったような静寂だった。

「……ッ、ここまでか」

助手席で少年が息を呑む。
降谷もまた、最悪の結末を覚悟し、ハンドルを握る手に力を込めた。その時だった。
ジャケットの内ポケット……心臓に最も近い場所で、彼女から託された藤色のお守りが、焼けるような熱を放った。

(熱い……?)

それは物理的な温度を超えた、純粋な「意志」の塊のような熱だった。
同時に、歪んだ車内を柔らかな光が包み込む。
彼女の術式——「祈り」を形にする力が、この絶体絶命の極限状態で、最大限に発動したのだ。

ほんのわずかな偶然、けれど決定的な幸運。
空中で姿勢を崩しかけた車体が、まるで目に見えない優しい手に支えられたかのように水平を保った。
さらに、吹き荒れる爆風さえもが車の尻を押し上げ、本来なら海へ叩きつけられるはずの軌道を、数メートルだけ前方へとずらした。


「……行けッ!!」


降谷の咆哮と共に、RX-7は崩落した道路の端、奇跡的に残っていたコンクリートの斜面に吸い込まれるように着地した。
凄まじい衝撃が車体を揺さぶり、エアバッグが作動する。
煙が立ち込める中、降谷は荒い呼吸を繰り返しながら、反射的に内ポケットを確かめた。

そこには、ボロボロになり、役目を終えたかのように灰色の煤を被ったお守りがあった。


「……守られたのか。君に……」

あんなに小さく、自分を「出来損ない」だと蔑んでいた彼女。
その彼女が紡いだ祈りが、トリプルフェイスを使い分け、国という巨大な盾を背負う男の命を、文字通り繋ぎ止めたのだ。
降谷は震える手でお守りを強く握りしめた。
視界の端に映る、遠くの街並み。
そのどこかで、今も自分の帰りを待っている少女の姿を思い、彼は痛む体に鞭を打って、再びアクセルを踏み込んだ。


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