第6章 正義感の強い彼は彼女を護りたい 【名探偵コナン 降谷零】
「待ってください、降谷さん!」
彼女は自分の部屋へ走り、大切に保管していた小さな布の包みを持って戻ってきた。
それは、この世界に来てから彼への感謝を込めて、自分のわずかな呪力と術式を編み込んで作ったものだった。
「これ、持っていってください」
差し出されたのは、藤色の小さなお守りだった。
「これは……?」
「お守りです。……私のいたところでは、こういうものに『祈り』を込めるんです」
彼女は嘘をついた。
これは単なる願いではない。
彼女の術式……祈りを具現化し、持ち主の周囲にほんの少しの「幸運」を引き寄せる力を込めたものだ。
ほんのわずかな偶然が、死線を分かつことがある。
それを彼女は嫌というほど知っていた。
「……お呪いのようなものか?」
降谷が微かに目を見開く。
彼女の指先が微かに震えているのを、彼は見逃さなかった。
「どうか、無理にとは言いません。でも、これを……降谷さんのそばに置いてほしいんです。降谷さんに、良いことがたくさん起きますようにって、込めたものだから」
降谷は一瞬、戸惑ったようにそのお守りを見つめたが、やがてそっと手を伸ばし、彼女の手ごと包み込むようにそれを受け取った。
「……分かった。君の『祈り』、預かっていこう」
降谷の強張っていた表情が、一瞬だけ柔らかくなった。
「本当は、君のような一般人にこんな顔を見せるべきじゃないんだが……不思議だな。君の前にいると、張り詰めていたものが少し緩む」
「私は、降谷さんの味方です」
「……ああ。行ってくる。必ず、ここに帰るよ」
降谷はお守りをジャケットの内ポケットへ、心臓に近い場所へ仕舞うと、再び嵐のような夜の街へと消えていった。
残された彼女は、お守りに込めた術式が、彼にほんの少しの幸運と、そして「帰る道」を示してくれることを心から祈り続けた。