第6章 正義感の強い彼は彼女を護りたい 【名探偵コナン 降谷零】
平穏な時間は、テレビから流れる緊急ニュースの音によって唐突に破られた。
「……東京サミット会場で、大規模な爆破事件が発生しました……」
画面越しに映し出されるのは、黒煙を上げる巨大な施設と、騒然とする現場の様子だった。
家の中にいれば、ここは外界から切り離されたシェルターのような場所だった。
窓の外から微かに聞こえるヘリコプターの旋回音が、事件の重大さを物語っていた。
「……降谷さん、大丈夫かな」
彼女はハロの背中を撫でながら、ぼんやりと画面を見つめていた。
戸籍も身寄りもない彼女にとって、ニュースの向こう側の世界は遠い異国の出来事のように感じられたが、唯一の繋がりである男の身を案じずにはいられなかった。
その夜、玄関の鍵が開く音がしたのは日付が変わる頃だった。
いつもならハロが真っ先に駆け寄るはずが、この時は低く唸るような声を漏らしただけだった。
「降谷さん……!?」
リビングへ入ってきた降谷の姿を見て、彼女は息を呑んだ。
スーツの肩は汚れ、ネクタイは引きちぎられたように緩んでいる。
そして何より、左腕の袖が赤黒く染まっていた。
「お帰りなさい……って、その怪我! ニュースの、あれに巻き込まれたんですか!?」
「……ああ。少し、不覚を取った」
降谷の声は掠れ、ひどく疲弊していた。
彼はソファに倒れ込むように座り、乱暴に前髪をかき上げた。
「救急箱を! すぐに持ってきます!」
「待て、……大したことはない。風見に手当ては受けた」
「大したことあるに決まってます! 血が止まってないじゃないですか!」
彼女は降谷の制止を振り切り、奥から救急箱を抱えて戻ってきた。
直哉の暴力に晒されていた彼女にとって、血の匂いは恐怖の象徴だったはずだ。
けれど今、彼女の手を動かしているのは恐怖ではなく、目の前の男を失いたくないという一心だった。
彼女が震える手で血に濡れたシャツの袖を切り、傷口を露わにすると、降谷は微かに苦笑した。
「……すまないな。君を安心させるための場所なのに、こんなものを見せて」
「そんなこと、どうでもいいです。……あんな大きな事件の現場にいたなんて。降谷さんは、一体何と戦っているんですか?」
消毒液の染みる痛みに、降谷は小さく眉を寄せたが、彼女の問いにはすぐに応えなかった。
