第21章 起首雷同
────ナマエが、生きている。
その事実を何度も頭の中で反芻しながら、俺は高専の寮の一室へと足を運んだ。
─── コン コン コン
部屋の前まで辿り着き、軽くノックをしてみたが、中から返事は返ってこない。
静まり返ったドアノブをそっと捻ってみたものの、内側からしっかりと鍵がかけられている。
(……クソ、)
無事ならいい。
そうスカしていたくせに、いざナマエが生きていることが分かれば、一目だけでもその顔を見たくて、声が聞きたくて仕方がなくなっている。
最後にもう一度だけ軽くノックを落とした後、俺は寝間着のボトムスのポケットから、リングで束ねられた二本の鍵を取り出した。
『私の部屋の鍵!いつでも来ていいからね!』
『プライバシーどうなってんだよ』
『恵くんだからいいの!』
一本は俺の自室の鍵。
そしてもう一本は、交流会が終わった数日後にナマエから半ば強引に渡された鍵だった。
「…………入るぞ」
中にいるであろう部屋の主に届くように小さく声をかけ、ドアノブの鍵穴に銀色の鍵を差し込んだ。
カチャリ、と静かな廊下に解錠の音が響いてホッと息を吐き出すと同時に、俺の心臓はさらにうるさく鼓動を早めた。
(………何焦ってんだ。生きてるって分かってんでろ、)
深く目を閉じて、ドアノブを握る手に ぐっと力を込める。
息を吸って、吐いて、ゆっくりと目を開いた俺は、覚悟を決めてその扉を開いた。
「───……、」
開かれた視界の先、一番に飛び込んできたナマエの姿を目にした瞬間。
俺は ようやく腹の底から安堵の息を吐き出せた気がした。