第21章 起首雷同
うっすらと顔にかかった髪を払い除けて、白い肌に灯る月明かりを俺の影で遮断して、ナマエの唇へと自分のソレをゆっくり近づける。
(………………寝込み襲うとか、)
男として最低の部類だと分かっている。
それでも、ナマエを失う恐怖で限界まで枯れかけていた俺の理性は、猛烈にナマエの存在を求めていた。
心の中でどれだけ見苦しい言い訳を並べたところで、これから俺がしようとしていることは何一つ変わりはしないというのに。
「……ん、ふふ、…………めぐみく、すきぃ」
「…………、」
ふと零れ落ちた柔らかな笑みと掠れた小さな寝言に、触れ合いそうになった唇が数ミリの距離を保って止まる。
ナマエは今、きっと、夢の中でも俺の隣で笑っているのだろう。
そう確信した瞬間に、欲情した自分が酷く情けなく感じて、俺は身体を起こしてナマエから距離を取った。
そして、普段どれだけ絞り出そうとしても気恥ずかしくて出てこない簡素な返答が、口の端から零れ落ちていた。
「…………ああ。俺も、好きだ」
──── 明日以降、ナマエが目を覚ましたその時には、約束通り二人で映画を見よう。
そう心の中で決め込んで、俺はゆっくりと立ち上がった。
恋愛モノだろうが何だろうが、こうして生きて無事に帰ってきた以上、我儘なんて俺が何だって叶えてやる。
だからどうか、早く目を覚まして、いつもの顔で、いつもの声で、俺の名前を呼んでくれ。
そんな小さな願いを落として、俺は後ろ髪を引かれながらも部屋を出て、鍵を閉め、静まり返った廊下を歩いた。