第20章 神業
そもそも、反転術式の理屈が自分の中で何一つ定まっていない。
出来る人から聞くのが一番早いと思ったけれど、肝心の硝子さんには一度聞いた手前、今更改めて聞きずらく、ここまでずるずると来てしまった。
(あ………そういえば、)
たしか、五条さんも反転術式が使えると聞いたことがある。
他者への治療は出来なくても、自分自身に反転術式をかけられる五条さんにも、何かアドバイスをもらえたら。
……そしたら私は、また一歩、五条さんの背中に近づけるだろうか。
「………あの、五条さんも、反転術式を使えるんですよね」
「え、うん。使えるけど」
私の突然の問いかけに、アイマスクを外したままの五条さんが目を丸くして小さく頷く。
そして「なんなら今も、ていうか常に使ってるよ〜」と軽い調子で答えてくれた。
「反転術式って、ひゅーってやってひょいってするんですよね?それって、どうすれば出来ますか?」
「は?」
「?」
ベッドの上で、ふらふらと自分の人差し指を宙に泳がせながら真面目に尋ねてみる。
すると五条さんは心底わけが分からない、と言いたげな表情したあと、「あー……硝子か」と妙に納得したように呟いた。
その言葉に呼応するように、隣のベッドで男性の右腕に新しい包帯を巻き終えた硝子さんが、白衣のポケットに手を突っ込んでこちらを振り返る。
「それ、まだ覚えてたんだな」
硝子さんはくすりと軽く笑いながら、今度はいつもの気怠げなトーンのまま、だけど少しだけ真剣な声で説明をしてくれた。
「反転術式は、簡単に言えば"正"のエネルギー生成と付与だ。お前たちが普段使っている通常の呪力は、負の感情から成るエネルギー。
だから、呪力同士を上手く掛け合わせることで、負の呪力を"正の呪力"に変換して治療に回してる」
「正の呪力の………付与、」
その言葉が脳に落ちた瞬間、私の視界がパッと開けたような衝撃が走った。
………そういうことか。
だから あの夢の中の神子様は、両手の人差し指を交差させて、私にヒントを提示してくれていたんだ。