第20章 神業
混乱しながらも、空の上の視点からジッと神子様の姿を見つめていると、不意に彼女の視線がこちらへ真っ直ぐに向けられた。
───まるでそこから私が見ているのを知っているかのように、ピタリと目が合う。
神子様は真紅の瞳で私を射抜いたまま、何かを優しく伝えるように、胸の前で両手の人差し指を静かに交差させた。……そして。
「…………ごめんなさい」
(……え?)
空を見上げた神子様は、何故か贖罪の言葉を口から零し、胸が締め付けられるほどに悲しげな表情を一瞬だけ見せた。
しかし、次の瞬間には残りの負傷者の手当をテキパキと済ませ、ひと段落ついた後にふっと小さく息を吐いた。
「神子様!!��様がお戻りになられました!!」
「!!」
(………???)
��。単語──いや、誰かの名前だろうか。
それを耳にした途端、神子様はそれまでの強者の風格も聖母のような佇まいもすべて脱ぎ捨てて、まるで子供のように表情を崩し、弾かれたように村の出口の方へ駆けて行ってしまった。
��……。よく聞き取れなかったけれど、どこかで聞いたことがあるように思う。
それが一体"何"なのか、…あるいは"誰"なのか。
何故かその答えが、そう遠くない近いうちに分かってしまうような不吉な予感が脳裏を過ったところで───私の意識は、深い闇の底へと落ちていった。