第20章 神業
「……本体は、今どこにいますか?」
そう言って、私は震える唇を噛み締めた。
どれだけ自分の力を信用していようと、分からないものは怖いから。
「村の最奥に。……準一級以上の術師数名で足止めをしていますが、それもいつまで持つか、」
その言葉に、私は顔を上げて両腕に巻き付けた赤い布へ呪力を走らせた。
今この瞬間にも、誰かが命を賭けて呪霊と戦っているのだから、未熟な私がうだうだ悩んでいる暇なんて、一秒だってない。
「……行きます」
覚悟を胸にそう告げて、補助監督さんが出てきた鳥居をくぐる。
そして、夕日が沈み、深い闇が広がる廃村の中へ、私は足を踏み入れた。
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村、呪霊、血塗れで横たわる人々。
故郷を思い出す事なんて、車内で現場の詳細を聞いた時からときから分かってたはずだった。
……それにしてもこれは───あまりにも、酷すぎる。
「…………何人、殺したの」
すでに息を引き取って、ただの肉塊となって横たわる人の山。
それを足元に見つめながら、薄暗いお社の前でニッタリと口角らしき裂け目を持ち上げている呪霊に向けて、冷たい声で問いかけた。
『コロシテェ〜……ッ!シンジャェ〜!!ジゴクニ、オチロ……ッ!!』
最初から、答えが返ってくることに期待なんてしていなかった。
ただ、答えるように放たれた言葉はきっと、この場所に足を運んだ人たちに、幾度となく願われ続けたものなのだろう。
呪霊は呪詛を反芻するように同じ言葉を繰り返し、無造作な攻撃を私へと仕掛けてきた。
(…………どうやって、祓おうかな)
激しい風圧を頬に受けながら攻撃を躱し、一丁前に頭の中で戦術を考えてみる。
けれど何分、何十分悩んだところで、私の稚拙な頭に都合よく作戦が思い浮かぶことなんて、きっとないだろう。
悩んでいる暇すらも無駄になるのなら───私はいつものやり方で、全力をぶつけて力任せに祓ってしまおう。
そう腹を括って覚悟を決めた瞬間。
防御に徹していた私は、手元の布を無数の繊維へと変化させる。
それを目眩ましのように呪霊の顔面へ伸ばすと共に、今度は私から、その巨体の懐へと飛び込んだ。