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【呪術廻戦】呪いの嫁入

第20章 神業





山に囲まれた小さな廃村。人の気配が無くなった寂しい場所。


任務の現場は、思っていた以上に高専から距離があった。


心の準備をする間もなく送り出された戦地の入口には、生々しい血痕が黒ずんだシミとなって地面のあちこちに付着している。


車内での事前共有では、"特級相当"、"土地神"という事だけが伝えられ、それ以外の情報は何一つ得られなかった。



(………土地神、)



本来人を守るべきそれが、何故呪霊へと成り代わり、厄災を振りまいているのか。

そんな疑問を頭の片隅で反芻していると、すぐ近くから低く掠れた声が掛けられた。


「ここ最近、ネットの掲示板で『悪い願いが叶う場所』……いわゆる、呪詛の名所として妙な噂が広まっておりまして。
 ……これ以上呪霊が成長する前にと、我々が一級・準一級術師を伴って訪れたところ、すでに一級を遥かに超える力を持っていました……」


声のした方へ視線を向けると、廃村の入口に建てられた赤い鳥居の影から、血塗れの補助監督さんが現場での経緯を端的に伝えてくれた。


(呪詛……。神様に、悪いことを願ったの?)


祀られることを忘れられた お社に、負の感情を抱く無数の人間が訪れ、ただひたすらに身勝手な呪詛を吐き散らかした。

そして皮肉にも、その醜い願いを叶えるために現れたのは慈悲深い神様などではなく、人々の悪意を栄養として短期で肥大化した呪霊だったのだ。


「術式の使用は、……未だ確認されていません」
「………」


その絶望的な報告に、私はゆっくりと目を瞑り、深く息を吐き出した。


……私は、戦いの最中にアドリブで頭を使うことがあまり得意じゃない。

だからこそ、いつも任務の前には、補助監督さんから渡される事前資料にミッチリと目を通して対策を練るようにしていた。


今日も、直前とはいえほんの少しでも術式の共有があれば、何か対処法を組み立てられたのだけれど……何事も、そう都合よくいく訳がなかった。
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