第20章 神業
「……!!伏黒くんか!」
「……ども」
校務員の男性は俺の顔を凝視したあと、驚きに声を上げて両目を見開いた。
中学時代、何かと世話になった武田さんだ。
俺と武田さんが顔見知りだと察した途端、それまで同行していた補助監督の新田さんは「じゃ、後任せたっス!」と、光の速さで職務を丸投げ。
その後、俺は今回の被呪者である被害者たちの名前を挙げ、彼らにまつわる変な噂や黒い噂、悪い大人との付き合いや、バチ当たりな話がなかったかを尋ねていった。
・
・
・
先の話題に浮上したのは、自殺の名所で有名な心霊スポット・鯉ノ口峡谷 八十八橋。
武田さんとの会話で、この橋に何かあると踏んだ俺たちは、さっそく現場へ向かい、橋の上で様子を伺うことになっていた。
「虎杖、飛び降りなさい」
「ウス!!」
夜が更けた頃。
釘崎の有無を言わせぬ命令口調の指示に、手すりに結びつけたビニール紐を片手にぐるぐると巻き付けた虎杖が、妙に威勢のいい声を上げる。
傍から聞けば完全に一発アウトな自殺教唆だが、今回の呪いのトリガーとなる手がかりは、今のところ当時の彼らが行ったという"橋からのバンジージャンプ"のみ。
かなり昔に流行っていた度胸試しらしいが、命知らずにも程があるだろ、と内心で毒づきながら、俺は飛び降りを試みる虎杖の姿を車道から隠すようにして立っていた。
「虎杖悠仁、行きまーーっす!!!」
「早く行けや」
「ちょッ…!!」
高飛び込みの選手さながらに片手をピンと上げて宣誓した虎杖。
しかし、次の瞬間には痺れを切らした釘崎に容赦なく背中を蹴り飛ばされ、橋の下へ真っ逆さまに落ちていった。
「………死んだらどうすんだ」
「生身でコンクリの壁をぶち壊すタイプのゴリラよ?この程度で死なないわよ」
そんな釘崎の暴論を自ら認めてしまうかのように。
橋の下でピンピンした虎杖は「オーーーイ!!!なんか分かった!?!?」と、ちぎれたビニール紐を振り回しながら大声を上げていた。