第20章 神業
釘崎の言う通り、ナマエは俺たち一年の中で、頭ひとつ抜けた実力を持つ呪術師だ。
アイツが命を懸けて戦場へ向かったなら、俺たちがここで立ち止まっている暇なんて、一秒だってあるはずがない。
引き止めたのは、ナマエの実力を疑っていたわけではない。
ただ、本当に無事に帰ってくる保証がない任務に行かせるべきではないと思ってしまった。
……俺は今、自分が向けられて散々嫌がっていた庇護欲を、容赦なくナマエに向けてしまっている。
その傲慢さに自分で腹を立てながら、俺は新田さんから手渡されたタブレットを操作して、任務の詳細の確認を始めた。
「自宅マンションのエントランスで呪霊による刺殺。しかも全員、死ぬ数週間前から同じ苦情を管理会社にチクってる。
────『オートロックの自動ドアが空きっぱなしだ』って。他の住人に心当たりはなかったっス」
新田さんはそう告げると、手際よくシートベルトを締め直してアクセルを踏み、車を発進させた。
「でも日付も場所もバラバラ。同じ呪霊にやられたんですか」
画面に並ぶ被害者のデータをスクロールしながら俺がそう呟いたところで、横から覗き込んできた虎杖が「呪霊ってセンサーとかに反応すんの?」と素朴な疑問を投げかけてくる。
「センサーじゃなくて、ドアオペレータの方が呪霊の影響でバカになった見たいッス」
「ほーう………」
新田さんの答えに、いかにも分かった風に深く相槌を打った虎杖だったが、やはりピンときていないのだろう。
虎杖は「オペレーター……?」と小声で呟いた後、首を傾げている。
その様子をバックミラー越しに確認した新田さんは、少しだけ口角を上げて言葉を続けた。
「で、同じ呪霊の仕業かって話っスけど、残穢だけだとちょっと断定は出来なかったっス」
なんせ時間が空いてるし、と付け加えた新田さんは少しだけ声を潜め、バックミラー越しに俺たちの目を一瞥した。