第20章 神業
端末に表示されたメッセージの主は───中学時代にとても仲良くしてもらっていた、藤沼さんからのものだった。
"特に変わったことはないから、大丈夫だよ!"
"心配してくれてありがとう!"
画面に映る藤沼さんからのメッセージには、その明るい文言と共に、彼女がよく使う可愛らしい絵文字が添えられていた。
(………そんなこと、ないはずなんだけどな)
『もし少しでも変な違和感があったら、直ぐに私に連絡してね』と言葉を打ち込み、送信する。
指先を動かしながらも、どうしても納得できずに私は小さく首を傾げた。
事の経緯は、約一週間ほど前のこと。
藤沼さんにプレゼントした私の"御守り"が、一日置きに彼女の身辺で呪力を感じるようになった。
中学の卒業式の後、別れを惜しみながら即席で作り上げて彼女に手渡した"御守り"。
それは津美紀ちゃんや七海さんに渡したものと同じ、私の呪力と術式が編み込まれたもの。
故に、それは一定以上の強い呪力の感知ができて、所持者に危険が迫っている時、御守りを通して私へと伝わってくるのだけれど。
(……誤反応?)
そう思い込もうとしたけれど、やっぱりどうしても拭えない違和感が残った。
私の呪力が、…研鑽してきた術式が、簡単な呪力探知を疎かにするはずがない。
きっと藤沼さんは気づいていないだけで、彼女の身の回りに"何か"が確実に近づいている。
「……明日の任務が終わったら、藤沼さんに会いに行こう」
明日の任務の集合場所は、高専の正門前。
そこからどこに向かってどんな調査をするかまでは、まだ資料に書かれていなかった。
恐らく、当日に補助監督さんの口から詳細を知らされるのだろうけれど。
(……御守りが切れないうちは、無事でいてくれるはず)
だから、明日の任務をいち早く片付けて、すぐに彼女の元へと駆けつけよう。
直接会いに行けば、ついでに藤沼さんの身辺の調査や、残穢の確認が出来る。彼女が眠る横で、私が夜通し見守ることだって出来る。
「……よし!そうしよう!」
ぐるぐると渦巻いていた思考を無理やり纏めたあと、私は胸の中に溜まっていた悩み事と一緒に大きく息を吐き出す。
それから両腕をグッと伸ばして凝り固まった身体をほぐすと、私は明日に備えて浴場に向かうための着替えの準備を始めた。