第20章 神業
私の呪力と術式が宿ったこの"御守り"は、所持者に降り掛かる災厄や呪いを、文字通り身代わりとなって身に受け、祓うことができる。
ただ呪いの感知のために巻き付けていたつもりだったけれど、それ以上の効力があるのは良い誤算だった。
「苧環さん」
「……っ、はい!すみません!!」
廊下から促すように再び名前を呼ばれて、ハッと我に返って意識を手繰り寄せる。
そして最後にもう一度だけ。
津美紀ちゃんの細い髪をそっと優しく撫でてから、「また来るね」と小さな声で言い残し、私は静まり返った病室を後にした。
・
・
・
車の窓から流れていく真っ暗な夜の空をぼんやりと眺めていると、いつの間にか見慣れた高専の敷地へと到着していた。
遅い時間にわざわざ送り迎えをしてくれた補助監督さんにお礼を告げてから車外に出ると、都心から離れた高専特有の美味しい空気が肺いっぱいに染み渡る。
「ナマエ」
「……?」
ふと聞きなれた声音に名前を呼ばれて、幻聴を疑いながら声のした方へとゆっくり振り返る。
するとそこには、薄暗い常夜灯に照らされた高専の出入口の門に背を預けて佇む恵くんの姿があった。
「恵くん……!!どうしたの?」
「……部屋行っても居ねぇから、待ってたんだよ」
驚きとともに自然と口角が緩んでいくのを自覚しながら、私は小走りで彼の元へと駆け寄ると、どこかぶっきらぼうに言葉を返される。
それに申し訳ない。と思いつつも、わざわざ玄関先で待っていてくれるその行動が嬉しくて。
謝罪より先に「ありがとう」と感謝の言葉が出てしまった。
「待たせちゃってごめんね…!何か用でもあったの?」
「……明日の任務の詳細。一年四人で行けって五条さんが」
差し出された数枚の書類。
そういえば今日、珍しくお昼の授業前にフラッと顔を出した五条さんが、任務について何か言っていた気がする。
なるほど、と納得して手をポンと打ったあと任務の資料を受け取り、そのまま私たちは、並んでゆっくりと寮の方角へと足を進めた。